天変地異や疫病、戦争など人心が乱れるときに出てくるのが「陰謀論」だ。

最近ではSNSで拡散されることも多く、新型コロナウイルスワクチンやロシアのウクライナ侵攻に関しても次々と新たな論が登場している。
専門家は、頭ごなしに批判や否定するだけではない「向き合い方」が大事だと提言する。

ウクライナをめぐっては、南東部マリウポリの地下の広大な地下都市が、生物兵器研究所に通じているとする説が出回った。
ただ、そのイラストが映画『バイオハザード』に類似しているとの指摘もあった。

ロシアのプーチン大統領を「ディープステート(闇の政府)」の陰謀を阻止する「光の戦士」だとする陰謀論もある。
当のプーチン氏やロシアも「ウクライナはネオナチの集団」「被害はウクライナの自作自演」といった論を展開している。

新型コロナウイルスのワクチン接種についても、「殺人行為だ」と主張する集団「神真都(やまと)Q会」のメンバーらが
接種会場に侵入したとして逮捕された。

また、強い地震が起こるたびに、米国またはロシアの「地震兵器」によるものだという説がまことしやかに語られる。

いずれも荒唐無稽にみえる陰謀論だが、信じる人はいる。

デマや陰謀の検証を行う電気通信大の石垣陽特任准教授(リスク情報学)が1008人を対象に実施したアンケートでは、
新型コロナワクチンに「放射性物質」や「5G(第5世代通信)チップ」「人体に害を与える物質」が意図的に混入されている、との設問に
「強くそう思う」「ややそう思う」「どちらともいえない」と回答する人は20%以上を占めたという。

石垣氏は「5人に1人というのは意外に多い印象だ。

信じやすい人とそうでない人の間には、年齢や学歴、宗教的・精神的な趣味嗜好などの相関はなかったが、
信じやすい人にはコロナで収入が減った人や孤独感を持つ社会的弱者が目立った」と分析する。

陰謀論の出どころについて石垣氏は「愉快犯や政治的意図など、一部の人から発信されると考えられるが、
普段から多数意見を信じない知的な人≠ルど飛びつき、拡散に至ることも多い」と話す。

一連の陰謀論についてはSNSなどでも批判や否定の方が多いが、陰謀論を否定するだけでは負の循環≠ノ陥ってしまうという。
石垣氏は「陰謀論を信じ込んでいる人をばかにすればするほど、より頑なになるし、相手にしなければ、『言論封殺だ』と主張する余地を与える」とする。
https://www.zakzak.co.jp/article/20220424-ZZFW24KMERI7LJBXJSA2DMY4SA/