2022年05月23日

 古代ローマは、多くの伝統を現代社会に伝えたが、排泄に関する感覚は現代とはだいぶ違うようだ。彼らは尿をかなり有効に利用していた。

 歯を磨いたり、衣服を洗濯したり、皮をなめしたりするのに尿を使ったのだ。古代の洗濯屋は、人々が用をたすために公共の場に設置された大きな陶器の壺から尿を回収していた。

 大量の尿が集められて使われるようになったため、そのうちローマ皇帝はこれに課税するようになった。

 「pecunia non olet(金は臭わない)」は、金銭に貴賎がないことを示す言葉だが、西暦一世紀にウェスパシアヌス帝が課税したこの尿税によって生まれた有名なフレーズだ。





古代ローマの尿の利用法

 今日の私たちは、とくにかえりみることなく尿を下水として流してしまっているが、古代世界では尿は非常に価値ある有用品だった。

 尿にはリンやカリウムなどの重要なミネラルや化学物質がたくさん含まれている。古代ローマ人は、尿は歯を白くし、虫歯を防ぐと信じていて、マウスウォッシュや練り歯磨きとして使っていた。

 その効果は確かだったようで、実際に1700年代までマウスウォッシュや歯磨き粉として利用されていた。

 当時のローマ人にとって、ポルトガル産の尿は最高級品でそれゆえ値も張った。世界最強の尿とされ、歯のホワイトニングとしても使われた。

 現代人にとっては、尿の歯磨きなどもってのほかだろうが、実際に効果はあったらしい。

 尿にはアンモニアが含まれていて、これは今日の家庭の洗剤の多くにも含まれているからだ。

 尿を桶などに入れたまま放置しておくと、空気と反応してアンモニアが発生する。ローマ時代には、この尿を洗濯に使っていた。

 アンモニアが含まれているため、この時代に盛んだった織物産業にとっても、尿は重要なものだった。ウールやリネンを漂白したり、皮をなめしたりするのによく使われたのだ。




尿の回収業者にかけられた尿税
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