「ラーメン王国」の山形にとって由々しき数字が今年に入って明らかになった。中華そばの外食費で8年連続日本一だった山形市が、21年分で首位から陥落したのだ。こうした事態に、地元の印刷会社がある商品を企画した。

 きっかけとなったのは、総務省が2月に発表した家計調査の結果。都道府県庁の所在地や政令指定都市を対象とした昨年1年分をまとめた。

 1世帯あたりの中華そばの外食費をみると、2020年まで8年連続で首位に君臨してきた山形市は、前年比777円増の1万3434円だった。ところが、20年まで3連続2位だった新潟市が1万3734円。山形を300円上回り、逆転を許してしまった。

 全国平均は5647円で、東北6県では順に秋田市8544円、盛岡市8462円、仙台市8067円、青森市7875円、福島市7592円。

 山形市が圧倒的な支出額であることに変わりないが、市内ではショックが広がった。

 「大風印刷」営業部の高木龍人さんもその一人。自身も週1回はラーメンをすすり、「山形の人々にとってラーメンは県民食なんです」と言う。首位陥落を伝えるニュースを知り、消費拡大を支援できないか、ラーメン好きの同僚とアイデアを練った。

 目を付けたのがカプセルトイだ。「ガチャガチャ」「ガチャポン」などの名で長年愛され、再ブレークを迎えている。社内提案でOKが出て、「ラーメン手形キーホルダー」が誕生した。本体のクリアケースには、実際に山形市などで営業する五つの店の品々の画像を入れた。

 しかも、裏面には「大盛り無料」などと記載され、店で見せれば、その特典が受けられる。3・8%の確率で出てくるシークレットキーホルダーも用意した。

 カプセルトイの魅力は、何が当たるか分からない「ランダム性」だという。「たまたま出たラーメンを食べにお店に足を運んでもらい、新たな出合いにつながればうれしい」と高木さん。

 カプセルトイの自販機は、同市山寺の土産物・飲食店「えんどう本店」と、同市緑町の「めん工房さかい」に設け、4月末から販売を始めた。評判は上々で、新たに数店から「うちもやりたい」との要望も寄せられているという。(高橋昌宏)

朝日新聞 2022年5月26日 10時30分
https://www.asahi.com/articles/ASQ5T6W45Q5SUZHB00B.html