バイデン米大統領は5月31日、米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿し、ロシアのウクライナ侵攻に関して「米国や同盟国が攻撃されない限り、米軍部隊をウクライナで戦うために派遣したり、ロシア軍を攻撃したりすることはない」と直接的な軍事介入を改めて否定した。また「戦争はいずれは外交によって終わるが、あらゆる交渉は地上での(戦闘の)状況を反映するものだ。ウクライナが強い立場で交渉の席につけるように支援する」と述べ、ウクライナに対し、最新の「高機動ロケット砲システム(HIMARS)」を新たに供与する方針を示した。

 バイデン氏は、ウクライナ情勢を巡る米国の目標について「ウクライナがさらなる侵略を抑止し、自衛することによって、民主的で独立し、主権を保持し、繁栄したウクライナを実現することだ」と強調した。一方で、「北大西洋条約機構(NATO)とロシアとの戦争は望んでいない。プーチン氏(露大統領)とは意見の相違があるが、モスクワからの追放をもたらそうとはしていない」として、プーチン政権の転覆が目的ではないと説明した。

 ウクライナ支援に関しても「国境を越えてウクライナが攻撃することは促さないし、ウクライナに能力も与えない」と強調した。HIMARSは最大射程300キロの砲弾を撃てるが、米政府高官によると、ウクライナに供与する砲弾の射程は最大80キロ程度に抑えた。ウクライナ側も「ロシア領への攻撃には使用しない」と米側に確約したという。ただ、HIMARSは従来供与してきたりゅう弾砲より射程が長く、ウクライナ側は戦況の好転につながることを期待している。

 バイデン政権は5月21日、ウクライナや周辺国への軍事・経済・人道支援のために総額400億ドル(約5兆1500億円)の追加予算措置をとる法律を成立させた。6月1日に追加支援の第1弾として、HIMARSや対戦車ミサイル「ジャベリン」、ヘリコプターなど約7億ドル規模の兵器供与を発表する。【ワシントン秋山信一】

毎日新聞

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