8日、立憲民主党の内閣不信任決議案の提出に、自民党はカウンターパンチよろしく反発で応えた。参院選を視野に、野党の足並みの乱れを逆手に取って立民にダメージを加えようとのしたたかな戦術がのぞく。背景には、岸田文雄内閣の安定飛行。不信任決議案は本来、野党が政府、与党を追い込む最大のカードとなるはずだが、構図は一変してしまっている。

 不信任案提出に先立ち、この日、自民党本部で取材に応じた茂木敏充幹事長は最近繰り返している“皮肉”で最大野党を当てこすった。「国民感覚から言ってもいかがなものか。立民に対する国民の目はさらに厳しくなるんじゃないか」

 各種世論調査が示す内閣支持率は、5月末の衆参予算委員会の論戦を経ても、「高すぎるくらい」(自民幹部)の水準をキープ。国会会期末と直後の参院選が近づく中、有効打を繰り出せずに焦りを深める立民が「伝家の宝刀」に手をかけるのを、自民は待ちかねていたようだ。6日の党役員会で、首相自身が「野党は政局至上主義だ」と口火を切ると、すぐに「他の野党が同調できるのか疑問だ」(茂木氏)、「良識を持ってほしい」(福田達夫総務会長)。幹部も馬首を並べた。

 昨年の同じ時期。菅義偉内閣不信任決議案では、立民、共産党、国民民主党、社民党が共同提出に名を連ねた。今回は、立民の呼びかけを国民が取り合わず、日本維新の会に至っては「茶番だ」(幹部)などと突き放した。結局、採決で立民に同調するのは共産などに限られそうな情勢。自民は参院選で、昨秋の衆院選時に保守層のアレルギーをあおった「立憲共産党」のレッテルを立民に貼ろうと、さらに手ぐすね引く。

 (河合仁志)

西日本新聞 2022/6/9 6:00 (2022/6/9 9:37 更新)
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