国勢調査では10年に1回、最終卒業学歴のデータを調査しています。先ごろ行われた2020年はその10年に1回に当たります。
学歴別のデータと年齢別配偶関係のデータを掛け合わせると、学歴別の未婚率が計算可能です。

今回は、10年ぶりに更新された学歴別の未婚率についてみてみましょう。

■男女で大きく異なる年齢・学歴別の未婚率
各年代5歳階級別の最終卒業学歴別の未婚率を、それぞれの性別の年代別全体未婚率との差によって示したグラフです。
個別の細かい数字ではなく、「高卒以下」「短大・高専卒」「大卒以上」の3つに分類した場合の、男女の違いの全体像を見比べていただきたいと思います。

暖色系にしたものが生涯未婚率対象年齢である45~54歳の未婚率です(※当該データに不詳補完値はないため、ここでの未婚率計算式は従来型の不詳除く計算式。
不詳補完値と不詳除く計算式の違いについてはこちらの記事〈『「生涯未婚率の数字」なぜか2つ存在するカラクリ』〉を参照)。
https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/6/5/1040/img_654f2dfdb7eb22e2dfa384ae31df163f299050.jpg

これを見ると一目瞭然ですが、男女で大きく異なります。

まず、男性の場合は、高卒以下と大卒以上が正反対の傾向となっています。
つまり、大卒以上の学歴の男性は全体平均よりも低い未婚率で、結婚しやすい境遇であることがわかります。

特に、30代においては、高卒以下の男性は大幅に未婚率が高いのに対し、大卒以上は平均を上回る既婚率となります。
これを見る限り、高卒以下の男性が結婚したいのであれば、20代の頃に結婚しておかないとなかなか難しくなるようです。

一方、女性では、高卒以下とそれ以外とで正反対になります。男性同様、高卒以下と大卒以上は対照的ですが、その向きは男性とは逆です。
高卒以下の女性の場合、20代での既婚率が高く、30代でいったん苦戦するものの、
生涯未婚率である50歳以上はおおむね全体平均以下の未婚率に収まっています。

大卒以上の女性は、ほぼすべての年代で平均以上の未婚率であり、本来最も女性の初婚数が多い29歳までの年齢において、
大卒女性はむしろ最も未婚率が高い状態となってしまいます。

■深刻なのは高卒以下の男性の未婚率

これだけを見てしまうと、「大学に進学した女性は結婚できなくなる」と考えがちです。
確かに、生涯未婚率対象年齢で比較すれば、高卒以下や短大卒に比べて大卒以上女性の未婚率は高い。
しかし、経年推移でみると、大卒だけが未婚率が上昇しているわけではありません。

それよりも、深刻なのは高卒以下の男性の未婚率が高いことです。
男性の未婚率は2020年には28%(不詳補完値)とほぼ「3人に1人は生涯未婚」という状況になっていますが、それらは高卒以下の男性の未婚化の影響が大きいといえるでしょう。

言い方をかえると、大卒でそこそこの企業に就職して一定額以上の年収を確保できた男性は結婚することができましたが、
この30年も続く不景気の中で年収を増やすことができなかった高卒男性が未婚のまま取り残されたという見方もできるでしょう。

(中略)

本人の学歴によって将来の所得格差が生まれてしまうことは間違いのない現実ですが、実は、残酷なのは、生まれた両親の所得状況によって子どもの学歴はある程度決定づけられているという現実です。

親の所得と子の学歴は相関します。いい大学に行ける子は親が裕福だから行けるのです。本人の学力や努力だけの問題ではありません。
どんなに優秀で医学部に行きたいと子が願っても、その学費を払う能力のない家の子は進学することは不可能です。

そして、さらにいえば、親の所得は子の結婚にも影響します。

https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/6/f/570/img_6f0c607c9d416be22a0fc2f7c82fd271330416.jpg

男性の30~40代、女性の50代に関しては、親が低所得である人の未婚率が明らかに抜きんでて高いことがわかります。
なぜそうなるかといえば、「親の所得で子の学歴が決まる→学歴で子の就職先が決まる→就職先で年収が決まる→低年収では結婚できない」という流れになるからです。

高卒男性の未婚率が上昇している背景には、こうした「目に見えない世襲格差」があるのでしょう。

(全文はソースにて)
https://toyokeizai.net/articles/-/596614