2022/7/6 12:00
村上 栄一

産経WEST

平成30年7月の西日本豪雨から4年。愛媛県宇和島市では記録的豪雨により土砂崩れや土石流が発生し、災害関連死2人を含む13人が亡くなり、29人が重傷を負った。被害は愛媛ミカン発祥の地として知られる同市吉田町でも著しい被害があり、
現地では畑の再建など今も長い闘いが続いている。柑橘農家の山内直子さん(57)は「苗は植えたけれど、もうかるようになるには10年かかります」と話し、まだ手入れが間に合っていない園地を見やった。


山内さんが住む吉田町白浦地区は宇和海の法華津湾に面する谷状の地形。柑橘栽培が盛んで、山内さんも同地区を中心に、約500アールの畑で24品種の柑橘を栽培している。

平成30年7月7日の悪夢はとても忘れることができない。朝から停電し、いたるところで山が崩れた。

近所の人に「畑が崩れとるよ」と言われ、見に行こうとしたが、家の前の川はあふれていた。道路は寸断し、畑へ行くことはできなかったという。地区は「陸の孤島」になっていたのだ。


悲しかったのは、保育園に通っていたころからの幼なじみの女性の死だった。山内さんが近所の人から、友人の家が土砂崩れの直撃を受けたと聞いたのは同日の夜だった。「大丈夫?」。心配してLINEを送ったが、ついに既読になることはなかった。
入り江沿いに建っていたその友人の家は一瞬のうちに裏山の土砂ごと海へ押し出され、友人と年老いた両親の合わせて3人が犠牲になった。

「お葬式は道路が通ってからで、1週間後でしたね。本当にあっちこっち崩れて、橋も落ちて。泥と水との闘いでした」と山内さんは8月の終わりまで続いた苦しい日々を振り返る。


「電気はなく、小さい子は集会所で近所のお母さんたちが交代で面倒を見た。物資は船で運んできていました。道路をひらいてくれたのは自衛隊でしたよ」

https://www.sankei.com/article/20220706-WEB3FPINF5NGRFK5BSBDK65STI/