就任から間もなく1年半を迎えるバイデン米大統領(79)の支持率が低迷している。
高水準の物価高、相次ぐ銃乱射事件、ロシアのウクライナ侵攻など内外に課題が山積しており、今年11月の上下両院選などの中間選挙に向けて、アピール材料の乏しさに苦慮している。

 「経済は成長しているが、痛みもある。国内外で自由が脅かされ、最近はこの国が後退しているのではないかと思うようなことが起きている」。
バイデン氏は7月4日の独立記念日に演説した際、現在の苦境を認めざるを得なかった。
約40年ぶりの高水準で推移する物価高やロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加え、5月以降に銃乱射事件が相次ぎ、6月には連邦最高裁が中絶を選ぶ権利を認める判例を覆した。
銃規制強化や中絶の権利擁護を提唱してきたバイデン政権には逆風が吹いている。

 政権の苦境を反映するように、バイデン氏の支持率は低迷している。
政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が集計した全米平均の支持率は6月上旬に4割を切り、7月5日時点では38・4%だった。
2021年8月下旬から不支持が支持を上回る傾向が続き、反転上昇の気配は見えない。

 相次ぐ課題に対して、バイデン政権も対処に努めているが、十分な成果は上がっていない。
銃乱射事件を受けて、軍事用ライフルの所持禁止などの抜本的対策を訴えたが、銃規制に慎重な野党・共和党が反対。
与野党の妥協で6月に成立した新たな銃規制法は、銃購入希望者の身元調査の厳格化などの内容にとどまった。
バイデン氏は4日の演説で「約30年ぶりに本格的な銃規制法が成立した」と誇ったが、演説の直前に中西部イリノイ州シカゴ近郊で独立記念日のパレードを狙った銃乱射事件が発生。
容疑者の男は威力の高いライフルを使用し、7人を殺害した。

 最高裁が州による中絶禁止を容認した判決を巡っても、民主党内から「判決後の対応が不十分だ」と批判されている。
バイデン氏は、中絶が禁止された州の女性に関して「中絶手術を受けるための他州への移動や経口中絶薬の入手を州政府が妨害すれば、連邦政府が対処する」としているが、財政的な支援など具体的な対策は明らかになっていない。

 物価高を巡っても、バイデン氏が6月下旬に連邦政府のガソリン税停止を提案したが、
民主党内からも「消費者の恩恵が極めて小さいのに、インフラ整備の財源を減らすことになる」(デファジオ下院運輸経済基盤委員長)と懐疑的な声が上がり、実現の見通しは立っていない。

 有効打を打ち出せないバイデン氏に対して、24年の次期大統領選に向けても厳しい目が注がれている。
ハーバード大などによる6月28~29日の世論調査では、71%が「立候補すべきではない」と回答。
バイデン氏の仕事ぶりに関しても「大統領としてあまりに高齢」(64%)、「精神的に職務にふさわしい状態か疑問だ」(60%)と批判的な意見が多かった。
共和党のトランプ前大統領(76)との「再戦」になった場合の投票先でも、トランプ氏(43%)がバイデン氏(40%)を上回った。【ワシントン秋山信一】
https://news.yahoo.co.jp/articles/b1e780960a00c04f3b3736cc1fe1f23ebf48ef2a