【ワシントン=坂口幸裕】米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は22日、中国が軍事力を使って台湾侵攻に動いた場合の米政府の対応を明確にしない「戦略的曖昧さ」を維持する意向を重ねて示した。歴代政権がこの戦略を踏襲し「台湾海峡の平和と安定の維持を可能にしてきた」と述べた。

米西部コロラド州で開いた安全保障の国際会議で語った。バイデン大統領は5月下旬に来日した際の記者会見で、中国が台湾に侵攻すれば台湾防衛のために軍事的に関与すると明言。歴代政権の政策修正と受け止められかねない発言だった。

台湾関係法では米国が台湾の自衛力強化を支援すると定め、武器輸出を継続する。中国抑止とともに、台湾の一方的な独立も認めない現状維持が地域の安定に寄与するとの判断がある。

サリバン氏は22日の会議で、ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ「台湾は領土防衛などに関する教訓を得ている」と強調。「情報戦や中国を巻き込んだ潜在的な有事にどう備えるかについても学んでいる」と話した。

ウクライナ侵攻でロシアが想定外の苦戦を強いられていることを念頭に「大きな国、軍が、より小さな隣国、軍を攻撃し、目的を達成できなかったと言える」と指摘し、中国を警告。ウクライナ侵攻と台湾有事に関しては「欧州の陸上戦と台湾海峡を挟んだ有事の性質は全く異なる」と訴えた。

米中関係については「あらゆる領域で競争し、競争が意図しない対立や新たな冷戦に陥ることがないようにする。インド太平洋、欧州、中東での中国とのグローバルな競争に効果的に対処できる」と主張した。

日本経済新聞 2022年7月23日 7:59
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