8月3日召集の臨時国会で行われる見通しの故安倍晋三元首相の追悼演説を巡り、演説者の人選に与野党の注目が集まっている。首相経験者に対しては、野党第1党の党首級の登壇が一般的。ただ、安倍氏は立憲民主党の前身の旧民主党など野党と激しく対立してきた経緯もあり、与党内では、自民党の首相経験者や岸田文雄首相を推す声が出ている。

 追悼演説は5日の衆院本会議で行われる予定。演説者は、遺族の意向なども踏まえて自民が野党と協議し、衆院議院運営委員会で最終決定する運びだ。

 首相経験者が亡くなった場合、野党第1党の党首や元首相が演説を行うことが多い。1980年に病死した大平正芳氏に対して当時野党第1党だった社会党の飛鳥田一雄委員長が行った。2000年の首相退任後に死去した小渕恵三氏の追悼演説は、野党第1党ではないが、社民党の村山富市元首相が登壇した。

 野党党首に対して、時の首相が追悼演説したこともあり、60年に刺殺された浅沼稲次郎・社会党委員長に対する池田勇人首相の演説は今も語り継がれる。浅沼氏を「好敵手」と評し、「沼は演説百姓よ よごれた服にボロカバン きょうは本所の公会堂 あすは京都の辻の寺」とライバルをたたえる詩を引用。野党からも共感され、政権浮揚にもつながったとされる。

 こうした慣例に当てはめれば、今回は野党第1党である立憲民主党の泉健太代表や野田佳彦元首相の名が取り沙汰されるはずだが、今のところ両党からそうした声は上がっていない。

 自民党内では、安倍氏の盟友だった麻生太郎元首相や第2次安倍政権で長く官房長官を務めた菅義偉前首相を推す声が出ている。岸田首相が適任との声もあるが、現職の首相が首相経験者の追悼演説を行った例はない。安倍氏が率いた安倍派からは「昭恵夫人の意向が最大限尊重されるのでは」(ベテラン議員)との見方も出ている。(関口潤)

北海道新聞 07/26 11:06 更新
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