安倍元首相葬儀 都教委も都立校に半旗掲揚を依頼 255校に文書送信 複数校が掲げる

 東京都教育委員会が7月12日の安倍晋三元首相の葬儀に合わせ、半旗掲揚を求める文書を都立学校全255校に送り、複数校が掲揚したことが分かった。専門家は「政治的中立を求める教育基本法に反する恐れがある」と指摘。同様の依頼は川崎、福岡市などでも判明している。(中山岳)
 都教委などによると、文書は通夜があった11日に都総務局が作った「事務連絡」。半旗掲揚について「特段の配慮をお願いしたい」とし、11、12日の掲揚を依頼した。教育庁を含む各部署にメールで送り、教育庁が都立高校や特別支援学校に転送した。
◆都の担当者「強制したつもりはない」
 「『日の丸・君が代』不当処分撤回を求める被処分者の会」などによると、23区内外の複数の都立高校で半旗が掲揚された。都教委の担当者は取材に「事務連絡を転送しただけで、掲揚するかは各校の校長に任せた。弔意を強制したつもりはない」と回答。総務局の担当者は「安倍元首相は東京五輪をはじめ都政にご尽力いただいた。銃撃事件は都民にも大きな影響を与えており、国の機関でも掲揚されたことを踏まえてお願いした」としている。
◆政治的中立求める教育基本法に反する恐れ
 掲揚された学校の教員は取材に「安倍氏の家族葬に合わせて掲揚するのは政権与党への忖度。生徒が当たり前と感じないか心配だ」と話している。
 佐貫浩・法政大名誉教授(教育行政学)は「個人の死をどう弔うかは憲法が保障する思想・良心の自由の根幹で、半旗掲揚は教育基本法にも反する恐れがあり、避けるべきだ。安倍元首相への評価は国民の間でも分かれており、弔意を強制することはできない」と話している。

東京新聞 2022年8月6日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/194182