第2次岸田改造内閣が10日、発足した。山積する課題の中で何を優先するのか。岸田文雄首相は記者会見で、新型コロナを乗り越えて経済を再生させ、国際情勢が緊迫する中で、平和と安全を守ると強調した。今後、実効性のある具体策が問われる。

 岸田文雄首相は第2次安倍政権で4年8カ月にわたって外相を務めた経験をもつ。今回の内閣改造で林芳正外相を「政権の骨格」の一人に挙げ、続投させた。外交の継続性を重視した形だ。

 林氏も10日の記者会見で、昨年11月の就任以降の訪問国は17カ国、対面やオンラインの会談は約240回にのぼったと説明。「各国の大臣との間で信頼関係を構築しながら、多くの外交課題に対応してきた」と実績をアピールした。

 ただ、首相は記者会見で「外交・安全保障への取り組みは一刻の猶予も許されない」と厳しい現状認識を示した。

 実際、ペロシ米下院議長の訪台で米中の対立は激しさを増し、4日には中国が発射した弾道ミサイル5発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下。日中は来月、国交正常化50周年を迎えるが、関係改善は暗礁に乗り上げた。

首相と防衛相に共通する考えは
 首相は10日の記者会見で中国について「こうしたときこそ、しっかり意思疎通を図ることは重要だ」と強調した。その上で、日中首脳会談について「現時点で何も決まったものはないが、我が国としては中国側との対話については常にオープンだ」と語った。しかし、見通しは立たない。

 さらに日韓では元徴用工問題が横たわる。ロシアによるウクライナ侵攻も出口が見えない。

 来年5月には主要7カ国首脳会議(G7サミット)が広島で開催される。首相がこだわる「核兵器のない世界」でどう成果を出せるか手腕が問われる。

 安全保障環境の厳しさも増している。首相は10日の記者会見で「年末に向けた最重要課題の一つが防衛力の抜本強化だ」と述べた。

 焦点になるのが防衛費の増額だ。現在、防衛費は国内総生産(GDP)比で約1%にあたる約5兆円だが、自民党はGDP比2%以上への増額も念頭に置く提言をまとめている。首相は防衛相に浜田靖一氏を起用した。浜田氏は首相と当選同期で、麻生内閣で防衛相を務めた自民党の国防族。「経験も豊富でバランス感覚もいい」(防衛省関係者)と歓迎する声が上がる。官邸関係者も「政権内での突出した議論を抑えられる」と期待する。

 浜田氏は防衛費について自民…(以下有料版で,残り1303文字)

朝日新聞 2022年8月10日 20時36分
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