2022.08.15(Mon)

深月 ユリア

 ハエの脳を遠隔操作して、人間にも活用しようという研究があるという。ジャーナリストの深月ユリア氏がその内容を紹介し、新たな可能性や今後懸念される課題点などを報告する。

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 学術誌「Nature Materials」(2022年6月27日付)によると、米・ライス大学の研究チームが「シンジョウバエの脳」を遠隔操作する研究に成功したという。

 囲いの中に入れたシンジョウバエの脳の電気信号を読み取り、ハエの脳にナノ粒子(※100ナノメートル以下の直径となる粒子。1ナノメートルは1メートルの10億分の1)を注入する。
そして、囲いの中の磁場を変化させることでナノ粒子が脳のニューロン(※神経細胞)を活性化させる、という方法だ。この方法で、研究チームはハエを操り、0・5秒で翼を広げた「交尾のポーズ」をとらせることに成功した。

 ライス大学の電子工学・コンピューター工学の准教授であるジェイコブ・ロビンソン氏によると、「特定の神経回路を遠隔操作することは神経工学の究極の目標である」「今後の研究の長期目標は、手術を行わずに、人間の脳の特定領域を活性化させる方法を作ること」。
1990年代よりMRI等といった人間の脳の活動を生きたままを観測する技術ができたが、今回の研究は「脳を遠隔操作できる」という点で画期的な技術である。

https://yorozoonews.jp/article/14694206