薬に関しても同様で、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で厳しく管理している。このコロナ禍で、塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス用の飲み薬のために、通常手続きを省き短時間で薬を「緊急承認」できるように法改正までしたにも関わらず、結局、薬の有効性が確認できず未承認のままというニュースが記憶に新しい。

 時には厳し過ぎると感じられるこれらの法律や規制が、日本の安心安全を守っていると言えよう。

 しかし、ことIT業界に対する政府の態度は全く逆なことが多い。企業の利潤追求を優先し、規制緩和を乱発して、その結果として消費者に混乱を生じさせていることも少なくない。

 すぐに思い出すのがQRコード決済の乱立だ。日本では、QRコード決済が広がる前、既に海外の人がうらやむ世界でも最も先進的な非接触の電子マネーサービスが普及していた(正確には、こちらも少し乱立気味だった)。

 そんな中、中国でQRコード決済が広く普及したのを背景に、新規参入を目論む企業が店舗側への初期投資の負担が少ない決済手段としてロビー活動を行い、官庁側もそうした動向を注視。最終的にQRコード決済を全面的に後押しした。その結果、キャッシュレス決済方法が乱立し、本来は簡単になるはずだったレジの操作がかえって煩雑になり、従業員不足で悩む店舗ビジネスの従業員にかえって負担をかけることになった。

 QRコード決済後援につながる動きは「日本再興戦略(改訂 2014)」の中でキャッシュレス決済の普及による決済の利便性/効率性の向上を掲げたことが発端だろう。それ以来、キャッシュレス化が慎重に議論されてきたはずだが、問題はこうした議論の多くでは、提供するサービスの「デザイン」や「品質」に関する視点が欠落していることだ。

 質を問わずに、ただサービス提供社の量だけが増えれば、それで消費者の利便性が向上すると後押しした結果が、その後の混迷である。

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