現代ビジネス2022.08.31
https://gendai.media/articles/-/98723

アフターコロナで経済回復が始まる中、アメリカやイギリス、フランスなどでは「グレート・レジグネーション(大量離職)」と呼ばれる新しい社会現象が新たな経済の問題となり始めています。

コロナ禍で人生を見直した人が、人生観に見合わない安い給料で働くぐらいなら働かないという選択肢を選ぶ。「大量離職」と呼ばれるように、そのような人たちが爆発的に増加しているのです。

結果として求人が増えているにもかかわらず就業率はコロナ禍以前の水準には戻らず、恒常的な人手不足が企業を悩ませています。

日本も今、値上げラッシュで苦しんでいますが、実は欧米では今年に入って以降のインフレ率を見ると前年比8~9%増というように、日本の比ではない大幅なインフレが起きています。

その理由が、じつは求人難による人件費の急増です。

とにかく人が採れない。アメリカの場合は人件費が急上昇しています。

時給4000円でも「働かない」
アメリカ労働統計局の雇用データによれば2022年4月の労働者の平均時給は約32ドル。折からの円安で換算するとなんと時給4250円が労働者の平均という水準です。

これは驚くべき数字です。アメリカで労働者をひとり雇う予算があれば日本で4人の労働者を雇えてしまう。それでも人が採れないという状況なのです。

そしてこの「大量離職」現象はいずれ必ず日本にもやってくるでしょう。

今は不景気で仕事を探す人が多いために不人気業種で最低賃金レベルの給与水準でも人をなんとか確保することができています。しかしサービス業や卸売・小売業の現場では数は足りず、外国人労働者がいなければ回らない状況です。

しかも、折からの円安で日本の報酬水準の魅力は外国人労働者から見て大幅に下がっています。

現実に現在の賃金水準と為替レートで比較すると、韓国や台湾へ出稼ぎに行くのと報酬水準はほとんど変わらないレベルまで日本の給与水準は落ちています。この先、少子高齢化による労働力不足が本格化する中で外国人も採れない時代がまもなくやってくる。

そうなると日本でも大量離職現象が大きな社会問題になってくるでしょう。