※2022/09/04 6:00 東洋経済オンライン

日本で刑事裁判の被告になると、99%以上の割合で有罪になる。最高裁判所事務総局の司法統計年報によると、2021年は第1審で判断された事件のうち有罪4万5138人、無罪88人だった。無罪はたった0.19%で、有罪は99.81%に達する。この無罪88人の1人は北海道・旭川地裁での判決だった。極めて珍しい無罪判決だというのに、地元以外ではほとんど報じられていない。どうやって“濡れ衣”を晴らしたのか。

車内で動画を見ていたら、警官がやってきた
旭川市の北隣、鷹栖町に野草を楽しめる「北邦野草園」(嵐山公園)という公園がある。植物は約600種。春にはピンクの小さい花で知られるカタクリなどが咲き誇り、大勢の人たちに人気だ。施設は旭川市の所管で、入園料もない。

JR旭川駅から約7キロとそれほど遠くないため、旭川市民にとっても憩いの場だ。散策路は全長5.2キロメートル。季節の花々を知ることができ、筆者も何度も取材に訪れたことがある。「開拓される前の豊かな森林植物の復元・保護をはかるため、自生種を中心に北邦系の植物が収集され、展示されています」(公式HP)という。

銃刀法違反事件という物騒な出来事の現場は、この公園だった。

2019年10月8日。北海道の秋は早く、冬が近づくその時期の北邦野草園は人影も少なくなる。週末は紅葉目当てに来園者もいるが、この日は火曜日で平日だった。

旭川市に住む当時70歳の男性はドライブに出かけ、この公園の駐車場に軽四輪自動車を止めて車内でiPadの動画を見ながら休息していた。男性は元タクシー運転手。退職してからもドライブ中によく立ち寄る場所だった。このとき、駐車場にはトラックと数台の車が止まっていた。

午前11時ごろ、パトカーが来て駐車場の奥でUターンし、男性が乗る軽自動車の近くで止まった。制服姿の警察官2人が降りて、近づいてくる。

何かの事件が起きて、その聞き込みだろうか。

男性がそう思って窓を開けると、「防犯警戒で回っています。危ないものがないか確認させてください」と言われ、免許証を出すように言われた。

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