日銀が3日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は前回の6月調査から1ポイント悪化し、プラス8となった。資源高と円安を背景とした原材料コストの増加が景況感を下押しし、3四半期連続で悪化した。大企業非製造業は新型コロナウイルスの影響が緩和したことから2四半期連続で改善し、プラス14となった。

業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値だ。9月調査の回答期間は8月29日~9月30日。回答基準日の9月12日までに企業の7割台半ばが答えた。

大企業製造業の業況判断DIはプラス8と、QUICKが集計した市場予想の中央値(プラス11)を下回った。中国のロックダウン(都市封鎖)が6月に解除されたことを受けて自動車産業を中心に景況感が改善した業種もみられたが、幅広い業種が原材料高の影響で悪化した。先行きは円安が業績の追い風になることなどから、プラス9と足元から小幅の改善を見込んでいる。

資源高と円安を背景とした原材料高が続くが、販売価格に価格転嫁する動きも進んでいる。大企業製造業の仕入れ価格判断DI(仕入れ価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」の割合を引いた値)はプラス65と、6月調査と並んで1980年5月以来の高水準にある。販売価格判断DIも6月から2ポイント上昇してプラス36と、仕入れ価格判断DIと同じ約42年ぶりの高水準だ。

企業の消費者物価見通しも上昇しており、全規模全産業の1年後の見通し平均は前年比2.6%上昇と、調査を始めた2014年以降で過去最高だ。3年後見通しは2.1%、5年後見通しは2.0%と、どれも2%台となっている。

大企業非製造業の業況判断DIはプラス14と市場予想(プラス12)を上回った。7月から8月にかけて新型コロナの感染が拡大したが、厳しい行動制限措置がとられなかったことで改善の動きが続いた。宿泊・飲食サービスや不動産、通信などで改善がみられた。

企業の事業計画の前提となる22年度の想定為替レートは全規模全産業で1ドル=125円71銭と、6月調査(118円96銭)から円安方向に修正された。ただ、足元の円相場は1ドル=144円台後半で推移しており、修正された想定レートよりも大幅な円安・ドル高水準にある。
日本経済新聞 2022年10月3日 8:53 (2022年10月3日 11:20更新)
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