「死ぬことになる。さよなら」とロシア兵…ウクライナ4州併合宣言後に敗走続き、5000人犠牲か

 ロシアのプーチン大統領が9月30日に併合宣言したウクライナ4州で、ロシア軍部隊の敗走が続いている。奪還された東部ドネツク州の要衝リマンでは、軍参謀本部が「編入」の祝賀ムードに水を差さないよう部隊撤収を禁じたとの疑いも。政権内では2日、軍への不満が表面化しており、前線に展開する部隊は厳しい状況に置かれている。
 「ウクライナ軍に囲まれた。死ぬことになる。君にさよならを伝えたい」
 ウクライナ情報機関は1日、リマン包囲戦でロシア軍兵士が妻に電話した際に傍受した音声を公開した。兵士は息を切らして「ひどい状況だ」と吐き捨て、妻は現実を理解できず戸惑っていた。リマンで抗戦した約5000人のロシア兵の大半が死傷した可能性がある。
 強硬派で知られるロシア・チェチェン共和国のカディロフ首長は2日、「現地の軍司令官を前線に送り、敗れた恥を自分の血で償ってもらう」と通信アプリに投稿。収監者らから募った「雇い兵部隊」を組織する実業家プリゴジン氏も「カディロフの言う通りだ」と軍幹部の責任に言及した。
 ウクライナのゼレンスキー大統領は「(プーチン政権内では)皆が敗北の責任を押しつけ合い、互いを攻撃している」と皮肉った。
 ウクライナ軍によるリマン包囲網は9月下旬から徐々に進められたが、ロシア軍部隊は危険が迫っても撤退しなかった。
 ウクライナメディアによると、東部ルガンスク州知事は「ロシア軍兵士は完全包囲される前、撤退を上申したが司令部から拒否された」と指摘。ウクライナ軍幹部は「ロシア国内は皆が『併合式典』に気を取られ孤立したリマンの部隊を助けようとはしなかった」と述べ、味方から見殺しにされたとの見方を示した。
 ウクライナ軍は1日から南部ヘルソン州でも反転攻勢を強め、ゼレンスキー氏によると2日夜までに二つの村を新たに解放した。
◆ロシア憲法裁「併合条約は合憲」、ロシア語が公用語に(略)

東京新聞 2022年10月3日 20時54分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/206200;