岸田政権発足1年 「信頼と共感」強調しても広がる「不信と反感」 国葬、旧統一教会問題も具体策語らず

 岸田政権は4日、発足から1年を迎え、岸田文雄首相は3日の所信表明演説で就任時に掲げた「信頼と共感」を再び強調した。だが、世論の反対を振り切って安倍晋三元首相の国葬を実施し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題でも閣僚を含む自民党議員の関係調査はずさんで、自ら「不信と反感」を広げる言動が続く。国民の信頼低下は内閣支持率の下落からも明らかで、野党との論戦が待ち構える今国会は首相にとって正念場になる。(山口哲人、坂田奈央)
◆国民の声「受け止める」と繰り返す
 「さまざまな意見を重く受け止め、今後に生かす」「説明責任を果たしながら取り組みを進める」。首相は演説で、安倍氏の国葬と旧統一教会の問題に言及したが、抽象的に国民の声を「受け止める」と繰り返しただけで、国葬のあり方や旧統一教会と政治家の関係見直しなどの具体論は語らなかった。
 国葬と旧統一教会問題は、内閣支持率低下の要因となっている。国民が首相の説明と対応に納得できていないためだ。国会の関与を経ずに閣議決定した国葬を正当化し続け、教会側と自民党議員の関係調査も当初は否定。批判が拡大した後に「自主点検」を始めたが、結果の公表後に山際大志郎経済再生担当相らの新たなつながりが相次いで判明。教会側と関係が深いとされる安倍氏は点検の対象外で、幕引きには程遠い。
◆格差是正のための「分配」はどこへ
 演説からは、政治姿勢の変化も読み取れる。首相は就任後初の所信表明演説では「分配」を12回繰り返した。成長重視で格差や貧困の拡大を引き起こしたと指摘される安倍政権の経済政策「アベノミクス」と一線を画し、子育て世代の教育費支援など4本柱の分配戦略を打ち出した。わずか1年前のことだ。
 だが、今回は「分配」の文字が消え「成長と分配の好循環」が「賃上げの好循環」にすり替わった。首相は「賃上げが高いスキルの人材を引きつけ、企業の生産性を向上させ、さらなる賃上げを生む好循環」と力説。分配に比べると、民間主導を促すような内容で、具体策の策定時期も「来年6月まで」で即効性は見えない。
◆じわりと濃くなる安倍カラー
 経済重視への傾斜など、安倍氏の路線と重なる部分も目立った。
 急激な円安などで進む物価高への対応では、電気料金の国民負担の緩和策を打ち出したが、詳細を語らず内容は分からずじまい。むしろ「円安のメリットを最大限生かす」と、外国人観光客の誘客や輸出企業への効果を強調し、円安を容認しているとも受け取れた。1年前は触れなかった再稼働、新型炉開発など原発推進の姿勢も鮮明にした。
 改憲でも、国会の演説では初めて「発議」に触れ「国会でこれまで以上に積極的な議論が行われることを期待する」と踏み込んだ。自民党が「反撃能力」と言い換えた敵基地攻撃能力の保有に関しては「検討を加速する」と明言した。
 首相は政策面でも自らのカラーを薄め、安倍氏を支持する党内保守派への配慮を重視したのか。演説に対する各党代表質問は5?7日、衆参両院で行われる。