ウクライナの子供たちのために開設された学校=2022年4月27日、ドイツ・ドレスデン - 写真=dpa/時事通信フォト
https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/amd-img/20221010-00062273-president-000-1-view.jpg

■ドイツで「教会離れ」が進んでいる理由

 【池上彰】日本では旧統一教会(現在の世界平和統一家庭連合)と政界のかかわりが明らかになり、政教分離が大きな話題になっています。世界中を取材されている増田さんは、世界の宗教と政治、社会の関係性をどうご覧になっていますか。

 【増田ユリヤ】例えばドイツでは、前政権の与党は「キリスト教民主同盟」、と宗教名が政党名に入っています。しかし支持者は敬虔なキリスト教徒に限りません。「宗教に基づく価値は重んじているけれど、宗教や教義そのものと政策が合致しているわけではない」という印象です。そもそも近年のドイツでは「教会離れ」が大きな話題になっています。

 【池上】ドイツ・カトリック司教協議会とドイツ福音教会が2020年に公表した年次統計によると、2019年にはカトリックが27万2771人、プロテスタントが27万人、合わせて54万人が教会の「信徒名簿」から籍を抜いたことが分かっています。

 【増田】ドイツで「教会離れ」が進んでいる理由に、教会税があります。ドイツでは洗礼を受けたすべての人に、所得税の8~9%に相当する教会税の納税義務が課せられています。これを負担に思う人が増えたほか、若者の中には聖書やキリスト教の教えに疑問を感じ、無宗教になる人たちも少なくありません。

(中略)

 【増田】メルケル前首相の難民政策には国内から反発もあり、反移民をスローガンに掲げた極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)が勢力を伸ばしたこともありました。異文化理解、多様性の実現は目指すべき社会のあり方ですが、個別の事例を見ると難しいところもあります。

■イスラム系難民の「助けられて当然だ」という態度

 【増田】例えばロシアによるウクライナ侵攻では、東欧に多くのウクライナ人が脱出し、避難民として受け入れられています。まだ半年だからというのもありますが、今のところ、見た目が似ているから違和感がない、ということに加え、同じキリスト教圏からの避難民ということで、地元の人たちとの軋轢が少ないようです。

 一方でイスラム圏から来る難民との間では、見た目も習俗も違うのはもちろんのこと、やはり宗教的規範が影響して、軋轢が生じる。特に受け入れ側が不満に思うのは、一部の難民が「自分たちは助けられて当然だ」という態度を取ることだ、というのです。

 【池上】イスラム教の考え方では、「人に施しをすることで天国に近づく」。つまり、難民は受け入れ側に「施しの機会を与え、天国に近づけたのだから、あなたが私に感謝すべきだ」という態度を取るわけですね。もちろん、「どうもありがとう」と感謝を示す人もいますが、根底にある価値観はなかなか変わりません。

■女性に対してかなり高圧的な態度を取ることも

 【増田】博愛精神で受け入れようと思っても、ヨーロッパの人たちとしては、「助けられて当然だ」というイスラム圏の人たちの態度を見ると、反発を覚えてしまう。表立ってそういう態度を取られた時に、「イスラム圏の人の中にはそう考える人もいるから、仕方がない」と思えるかどうかは難しいところです。さらにはイスラム教の世界では男性優位なので、女性に対してかなり高圧的な態度を取ることもあります。

 【池上】イスラム教といえば、日本では多様性を認めるべきという考え方から、イスラム教徒の女性がかぶるヒジャブ(ヴェール)にも寛容ですが、全身を覆うブルカを着用する人たちが目立つようになっても、同じように寛容な態度で受け入れられるかという問題がありますね。一方、政教分離を厳格に定めるフランスでは公立学校など、公共の場でヒジャブを被ることは認められていません。これは2004年に政教分離の観点から定められた法律に基づくもので、大きな十字架などの宗教的モチーフのついた衣服やアクセサリーを着用することも禁止されています。

 【増田】同じEU圏内で、同じくキリスト教的な考え方を文化の基盤としているドイツとフランスでも、政治と宗教の関係は大きく違っています。日本でも統一教会と自民党の関係から、「政教分離をより徹底すべきだ」という声も出てきています。(以下ソース)

10/10(月) 9:16配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/a70f5faa48746718fdffc980ff28981a40584be9