15秒に1回 勝手に声が出る“悪魔の病気”と闘う27歳ウーバー配達員 深夜の“メッセージ”が気になって25歳記者が話を聞いた トゥレット症・チック症とは

CBCテレビ
栁瀬 晴貴
2022年10月9日(日) 07:00





夜中、記者が頼んだウーバーイーツで…

2月中旬、当時愛知県警担当の記者だった私は、この日、いつものように名古屋市内で、警察関係者に話を聞く”夜回り”と呼ばれる1日の最後の仕事を終え帰宅した。

2月は大きな仕事も多く、疲れ切っていた私は、いつの間にか眠りに落ちていた。目が覚めたのは日付が変わる少し前。
食事を取るのを忘れていた私は、ウーバーイーツを頼むことにした。

選んだのは、沖縄料理。アプリで決済すると、しばらくして通知が鳴った。どうやら配達員からのメッセージだ。“彼”との出会いはここから始まった。




配達員から届いた“メッセージ”が気になって…

(記者のスマホに届いたメッセージ)
『ご注文ありがとうございます。この配達はわたくしREONが運ばせていただきます。チックという病気があり、身体の動きや声が出てしまう事がありますが、許して頂けると幸いです』

レオンを名乗る配達員から届いた突然のメッセージ。普段、配達員からメッセージをもらうことはまずない。恥ずかしながら病気のことも全く知らなかった。気になった私は、注文がくるまでの間、症状についてネットで“ググって”みた。

“自分の意思に反して声や体の動きが出る”

どんな人が来るんだ? 客にこんなことを知らせる理由があるのか?なぜ配達員をしているのか?疑問が頭の中を駆け巡る。

「ピンポーン」

注文から約30分後、インターホンが鳴った。モニターに映るその彼は、自分と同じくらいの年齢だ。

「あいよ!」「あいよ!」

彼の大きな声がマンションの廊下に響き渡る。配達員の彼が部屋に近づいてくるのはすぐにわかった。なるほど。メッセージに書かれていたのはこういうことか…。

CBCテレビの記者であることを明かし、連絡先を交換した私は後日、取材を申し入れた。





「取材は…ちょっと考えさせてほしい」

(ウーバー配達員・棈松怜音(あべまつ・れおん)さん・27歳)
「取材はちょっと待ってください。病気のことを多くの人に知ってもらえるのは嬉しいことですが、僕は今、ネットの掲示板にたくさんの悪口を書かれています。周りの目もあるので、考える時間がほしいです」

掲示板には「奇声を発する配達員」などと書かれて悩んだ時期もあったという。

この返事を聞いた時、正直取材は難しいと思ったが、連絡を取り合い、直接会ってもらう機会を持つことができた。そしてことし8月、ついに取材を許可してくれた。

取材初日、カメラに向かって怜音さんはこう言った。

(怜音さん)「僕はチック症、トゥレット症という病気なんですけど、声が出ちゃうタイプの人と、体が動くタイプ。つまり、運動チックと音声チックの2種類があり、僕は今、音声チックがメインのチック症患者になります。ごめんなさい。色々“迷惑”かけちゃうかもしれないですけど」

チックは無意識に声や身体の動きが出てしまう症状で、症状が長期間にわたり生活に支障をきたすほどになると「トゥレット症」という神経の難病に分類される。

脳の神経伝達の異常が原因と考えられているが、根本的な治療法は見つかっていない。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/173669?display=1

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15秒に1回、勝手に声が…自分の中に潜む“悪魔”と闘う
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