警察を悩ませる「準暴力団」取り締まり 暴対法の対象外 池袋の乱闘事件に「チャイニーズドラゴン」関係か

 東京・池袋の高層ビル「サンシャイン60」の飲食店で今月16日夜に起きた大規模な乱闘騒ぎは、準暴力団「チャイニーズドラゴン」幹部の出所祝い最中の出来事だった。関係者は取材に「内部のグループ間の行き違いが原因」と証言する。チャイニーズドラゴン絡みの事件は後を絶たないが、準暴力団は暴力団対策法(暴対法)の対象外。警視庁幹部は「取り締まりが難しい」と頭を悩ませる。
 警視庁によると、現場はビル58階のフレンチレストラン。捜査員が駆けつけると、約100人いたはずの出席者は数人しかおらず、祝いの花や割れた皿が散乱し、血のついたナプキンが残されていた。
 男性1人がけがをしたが、病院からいつの間にか姿を消したという。同庁は傷害や器物損壊の疑いで捜査している。
 チャイニーズドラゴンは1980年代後半、中国残留孤児2、3世を中心に結成された。捜査関係者によると、メンバーは東京都内を中心に数百人。上野や赤羽、葛西など5つのグループに分かれているが、暴力団のように事務所や役職があるわけではない。
 「メンバーは結束力が強く、何か事が起きれば一時間で100人規模の招集をかけられる」と語るのは、あるチャイニーズドラゴン関係者。今回の乱闘騒ぎの原因について聞くと、出所祝いに招かれなかったグループのメンバーらが突然会場を訪れ、出席者の一部とトラブルになったためだと明かした。
 暴対法は、代表者の統制の下、階層的に構成されていることなどを指定暴力団の要件とする。出所祝いでの金品の授受やみかじめ料の要求を禁じており、活動をより厳しく規制できる「特定抗争指定暴力団」は、組員が5人以上集まることも禁止されている。各地の暴力団排除条例で暴力団関係者とみなされれば、銀行口座を開設することもできない。
 しかし、チャイニーズドラゴンのような準暴力団は、暴対法の網から抜け落ちている。警察庁は2013年、準暴力団について「常習的に暴力行為等を行っている集団」と定義し、チャイニーズドラゴンのメンバーらは、強盗や詐欺、覚醒剤の密輸などでも摘発されてきた。とはいえ、今回のような出所祝いで金品の授受があったとしても、取り締まることはできない。
 警視庁幹部は「乱闘事件は多くの市民に不安感を与えた。取り締まりのハードルは暴力団より高いが、違法行為があれば摘発を進めていきたい」としている。

東京新聞 2022年10月29日 19時23分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/210909