1000体の遺骨を残して納骨堂経営者が消えた…手軽で人気のビル型が抱える不安定要素とは

 札幌市で永代供養の納骨堂を経営していた宗教法人が破綻し、遺族らの間でトラブルになっている。今回のような「ビル型納骨堂」は「手軽」「身寄りがない」との理由で、東京都内など都市部でも人気だが、ビジネス要素が強く、危うさも残る。永眠を妨げない供養のあり方とは。(木原育子)

◆売り文句は「気軽にお参り」
 「いないんですよ、どこにも」。札幌市生活環境課の小山内康徳課長の声が、明らかに焦っていた。
 忽然こつぜんと姿を消したのは、市内で納骨堂「御霊堂元町」を運営する宗教法人「白鳳寺」の太田司代表だ。
 2012年に開業した御霊堂元町は、納骨壇の使用権を1基30万?250万円で販売。駅から近く、室内のため「風雨をしのげて気軽にお参りできる」を売り文句に、約1000体の遺骨を預かっていたという。
 市は、墓地経営許可条例に基づき、墓地や納骨堂の経営状態に調査権限を持つ。だが、市にとって、納骨堂が入ったビルの競売は、寝耳に水だった。
 市によると、競売を知ったのは第三者からの情報提供で今年7月。太田代表は市に対し「取り下げを含めて検討する」と説明したというが、その3週間後には不動産会社に落札された。
 同社に納骨堂事業は引き継がれず閉鎖に。市が何度太田代表に連絡しても取り合わず、今月21日の立ち入り調査の際、やっと会えた。24日には建物の明け渡しに向けた強制執行の予定だったが、25日ごろから再び連絡が取れなくなったという。
 小山内課長は「代表がおらず、納骨堂の鍵が開かないため中に入れず、遺骨を引き取れない遺族もいる」と現場の混乱ぶりを語る。
◆建築費高く維持管理費も必須
 葬送ジャーナリストの碑文谷創さんは「ついに危惧していたことが起きた」と重い口を開く。「ビル型納骨堂は元々、建築費も高く、維持管理費も必須なはず。だが、葬送に関する理念は乏しく、ずさんな管理体制の施設を何カ所も見てきた」と続ける。
 碑文谷さんによると、かつては骨つぼを「ロッカー」のようにずらりと並べるだけの簡素な形だったが、20年ほど前からは、お骨が入った厨子ずしが倉庫や銀行の貸金庫のように、訪問者のブースに自動搬送される「ハイテク型」など都市部を中心に需要が高まった。
 もちろんトラブルもあった。福井や大阪でも経営破綻のケースはあり、東京では破綻こそないものの経営譲渡など、ビル型納骨堂の不安定要素はあった。
◆「お骨にも尊厳を持たなくては」
 多死社会で、お骨を巡る状況は目まぐるしく変わる。海への散骨や樹木葬を始め、最近ではバルーン葬や宇宙葬まで幅広い。一方、埼玉県秩父市や北海道長沼町など、墓地以外の場所での散骨を規制する条例を制定する自治体もある。
 NPO法人「葬送の自由をすすめる会」の西田真知子副会長は「お骨や葬送のあり方をどうしていくか、法制定などを含めて国の関与や国民的な議論があってもいい」と投げかける。
 家族形態や意識の変化で「墓じまい」も多い。お墓の管理継承ができなくなった「改葬」は20年度で11万7000件余と、11年度の1.5倍だ。
 学識者や葬祭業者らでつくる「日本葬送文化学会」の長江曜子会長(聖徳大教授)は「米国では、お墓でも施設でも、あらかじめ維持管理費として数十%を基金にしておく永遠管理基金制度を敷くなど、真に永続できる経営システムがある」とし、「日本は今回のように、契約書が曖昧だったり無責任な経営実態がある」とする。
 「万が一破綻した場合、誰が責任をもつのか。もちろん自己責任の側面はあるが、お骨という故人に対しても尊厳を持たなくてはならない。もっと国や自治体が使用者保護の観点から仕組みを整備していく必要がある」

東京新聞 2022年10月29日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/210756