※11/8(火) 5:31配信
東洋経済オンライン

今年のノーベル経済学賞はベン・バーナンキが受賞した。日本で数少ないバーナンキ門下生の一人が慶應大学商学部元教授の渡部和孝氏(49歳)だ。本誌編集者はノーベル賞の取材のため渡部氏に連絡を入れた。ところが、渡部氏は9月末に大学でのポジションを失ったばかりだった。2019年に脳梗塞で倒れ、今も言語障害に苦しんでいる。
「経済的な不安の中で、この先どう生きていったらいいかわからない」。初めて連絡を取った編集者に、渡部氏はそう吐露した。他に相談できる相手がいないからだ。突然の病によって、誰にでも起きうる孤立と孤独。救いの手はあるのか。

■文字がまったく読めない

 ハロウィンで飾られたかぼちゃの絵を指さして、渡部和孝は言う。

 「あれは何て言うんでしたっけ?  あの、そこにある、丸い……」

 「かぼちゃのことですか?」と記者が聞くと「そうでした。そんなこともわからなくなっていて」と口ずさみ、うつむいた。

 言葉が出てこない。文字を正しく認識できない。脳梗塞の後遺症による失語症だ。第一線の研究者として活躍し、語学も堪能だった渡部にとって、これほどつらいことはない。「えーと、言葉が出てこなくて……」。簡単な言葉を思い出せず、何度も沈黙が流れる。それでも長い時間をかけて記者の質問に答えた。

 渡部が病に倒れたのは2019年5月。マンションの管理人と話していたところ、呂律が回らなくなった。歩くことはできたため、タクシーに乗るかのように救急車で搬送された。持っていた本を病院で開くと、まったく文字が読めなくなっていた。

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