【ニューヨーク=斉藤雄太】米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード副議長は14日、今後の利上げについて「より緩やかな引き上げペースに移行することがまもなく適切になるだろう」と語った。12月13~14日開催の次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を0.5%に縮小する意向をにじませた。大手事業者の破綻で揺れる暗号資産(仮想通貨)業界の規制強化の必要性にも言及した。

米ブルームバーグ主催の対談イベントで語った。FRBは11月2日のFOMCで4会合連続となる0.75%の利上げを決める一方、金融引き締めの経済・物価への影響が時間差で生じる点を踏まえ、「早ければ次(12月)の会合」(パウエル議長)で利上げ幅縮小を議論する考えを示していた。ブレイナード氏の発言も12月の利上げ減速の見方を後押しするものだ。

ブレイナード氏は「インフレを持続的に(目標の)2%まで抑制するためにまだやるべき仕事がある」とも強調し、ペース減速後も利上げは続くとの見方を示した。最終的な利上げの到達点については明言を避けた。「より慎重なペースで前進することでより多くのデータを評価できる」と述べ、景気や市場安定にも目配りしながら金融引き締めの加減を調整する考えを示した。

物価動向では10月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍ったことを受け「我々が真に注目している(食品・エネルギーを除く)コアの個人消費支出(PCE)物価指数も少し減速していることを示唆している」と述べた。供給制約の緩和に伴いモノの価格上昇が鈍り始めたことを評価しつつ、「コアのサービス価格である住宅は依然として(インフレ圧力が)強い」ことに警戒感を示した。

仮想通貨交換業大手のFTXトレーディングの経営破綻についても問われ「個人投資家が大きな打撃を受けているのは非常に気がかりだ」と述べた。「これらの(仮想通貨)市場はいかに非中央集権的で革新的、従来と異なるかが喧伝されてきたが、実際は高度に集中し、相互接続し、(信用不安が広がる)ドミノ効果が起きているのを目の当たりにしている」と指摘した。

「1つのプラットフォームや企業の失敗が他へ波及し、投資家を危険にさらすという点では仮想通貨も伝統的な金融と変わらない」とも強調。仮想通貨の事業者には「既存の規制を順守させるか、場合によっては規制の範囲を拡大し、強力で適切な規制のガードレールを設ける必要がある」と訴えた。

日本経済新聞 2022年11月15日 6:57
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN14CYX0U2A111C2000000/