[マフラク(ヨルダン) 9日 トムソン・ロイター財団] - ここはヨルダン、ザアタリ難民キャンプ。シリア出身の10代の少女たちが、教室でおしゃべりに夢中になっている。聞こえてくるのは、結婚した友人の話題。中には、すでに赤ん坊のいる者もいる。そして、自分が運よく児童婚を逃れた経験談だ。

ファティマさんが婚約したのは14歳のとき。だが途中で考え直し、婚約を解消した。16歳のボロージュさんは、妹を嫁がせようとしたファティマさんの兄と言い争いになったという。

「ファティマの兄さんをうまい具合に説得して婚約を解消し、彼女が学校に戻れるようにしてもらった。だからこうして教室で一緒にいられる」とボロージュさん。マフラク市近郊のキャンプに設けられた女子限定の人権教育のクラスで、クラスメートたちも賛同のしぐさを見せる。

国連児童基金(ユニセフ)による最新のデータでは、隣国ヨルダンで暮らすシリア難民の少女のうち、約35%が18歳になる前に結婚する。10年に及ぶシリア内戦が始まって以来、児童婚率は上昇している。

この比率は、シリア国内の児童婚率よりもはるかに高い。慈善団体「ガールズ・ノット・ブライズ(花嫁ではなく少女)」の推計では、シリアで18歳以前に結婚する女性は全体の約13%となっている。

だが難民の家庭の場合、経済的な理由や、難民キャンプにおける性暴力から娘たちを守るために、若い娘を嫁がせる例が多いとユニセフは指摘する。

「少女たちにとって、誰かと関わって面倒に巻き込まれないようにする、一種の保護メカニズムになっている」と語るのは、子どもの保護とジェンダーを理由とする暴力問題の専門家、ラマ・アルサアド氏。同氏は国連人口基金(UNFPA)と協力しつつ、無秩序に広がるザアタリ・キャンプで活動している。

だが、支援関係者やキャンプ住民によれば、この地に難民キャンプが開設されてから10年を経て、早期の結婚を求める社会的圧力に抵抗し、学業を続けることを選ぶシリア難民女性・少女が増えているという。

「結婚には大きな責任が伴う」とボロージュさんは言う。他の少女と同じく、プライバシーを守るためにフルネームは記載しない。

「周囲ではさんざん目にしている。女性たちは、子どもたちを育て、家族の世話をし、その上働いている。でも、子どもを育てる子どもにはなりたくない」

<否定される女性の自己決定権>
地球の総人口が80億人に近づく中、UNFPAは「女性の権利の拡大が多くの国で逆に後退する懸念」を警告してきた。自分の身体や将来についての決定権を奪われている女性は今も多い。

UNFPAのナタリア・カネム事務局長は、トムソン・ロイター財団が運営するニュースサイト「コンテクスト」の取材に対し、「妊娠・出産に関する権利と保健医療サービスへのアクセスは、食料、水、住居と同じくらい大切だ」と語った。

「妊娠・出産に関する選択権を得た女性は、学業を続け、よりよい就職機会に恵まれ、家族を貧困から脱出させ、コミュニティー全体の経済成長にも寄与する可能性が高い」

慈善団体「セーブ・ザ・チルドレン」によれば、毎年、世界中で少なくとも1200万人の少女が18歳に達する前に結婚している。

ロイター 2022年11月15日11:14 午前16時間前更新
https://jp.reuters.com/article/jordan-syria-women-idJPKBN2S109J