大阪税関が17日発表した近畿2府4県の10月の貿易概況(速報値)によると、貿易黒字は確保されたものの、黒字額は前年同月比約8割減と大きく落ち込んだ。資源価格の高騰や円安などで輸入額が膨らみ、黒字額を下押しした。15日発表された今年7~9月期の実質国内総生産(GDP)が4半期ぶりのマイナス成長になったのも輸入額の膨張が原因。関西は原材料を輸入に頼る製造業や中小企業が多く、輸入額の拡大の打撃がとくに大きい。経済復活の妨げとなることが懸念される。

「円安にはプラスとマイナスの効果があるが、プラスは輸出型の大企業に集中している。マイナスの影響が薄く広く、大部分の企業に及んでいる」。近畿経済産業局の伊吹英明局長は17日、定例会見でこう指摘した。

近畿2府4県の10月の貿易概況によると、輸出総額は前年同月比15・6%増の2兆20億円、輸入総額は48・6%増の1兆9373億円で、いずれも単月として過去最高を記録。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は647億円の黒字だったが、輸入額が膨らみ、黒字額は84・9%減少した。

輸入額の拡大は経済の逆風となる可能性がある。内閣府が15日発表した7~9月期のGDPが、プラス成長になるとの市場予想を裏切りマイナス成長に転じた主な要因は、円安などを背景に輸入が前期比5・2%増と大きく伸び、輸出の1・9%増を上回ったためだった。

製造業や中小企業の多い関西では、円安進行で収益悪化につながる懸念がとくに強い。東京商工リサーチによると、近畿2府4県の10月の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は前年同月比15・4%増の135件で、負債総額は33・8%増の95億円だった。円安による原材料高の影響を受け、飲食業の倒産が増えるなどした。


新型コロナウイルス禍の落ち込みから立ち直りつつある関西経済が腰折れする不安もあり、日本総合研究所の若林厚仁・関西経済研究センター長は「仕入れコストの上昇分を納入先や諸費者に価格転嫁していくしかない。為替予約で円安リスクを減らすなどの工夫も必要だ」と指摘する。(井上浩平)

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