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中国新聞デジタル

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元信者で広島県内に住む70代女性が中国新聞の取材に書面などで応じた。献金や物品購入を30年余り繰り返し、教団側に総額約4900万円を渡したという。

教団が2009年に法令順守の徹底を宣言した後も、求められるまま高額な献金をしていたと証言した。女性は自らの経験を踏まえ、被害者の救済や教団の解散を求めている。

「献金しないのは罪深い」と言われ…
 女性は09年夏、マンション購入のために父親から預かっていた1千万円を教団に献金した。教団関係者から「万物は全て神のもの。(お金を)持っているのに献金しないのは、持っていないよりも罪深い」と諭され、差し出したという。
当時、女性の心は「サタン(悪魔)が付いた万物を神に回帰するべきだ」という教義に染まっていた。

 先輩信者を「アベル」、女性を教団に誘った人を「霊の親」と呼び、所持金の出入りの連絡を徹底させられる日常。それ以前にも数万〜数百万円の献金を重ね、にんじん茶やつぼ、指輪、ネックレスを次々購入していた。

 親やきょうだいには長年にわたり「体調が悪い」とうそをつき借金した。先輩信者からカードローンの方法を教わり、限度額まで借りたカードは十数枚になっていた。

 教団は09年3月、信者たちが法令を守り、公序良俗に反することがないようにする姿勢を打ち出した。しかし、教団による被害者の救済に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会(東京)はその後も、高額な献金や物品購入の勧誘が繰り返されたと指摘する。

入信拒んだ夫と離婚、韓国人の男と合同結婚式
 女性が教団に入るきっかけは1983年春。関東地方の自宅に「姓名判断の勉強をしている」という1人の女が訪ねてきた。女は女性がいとこを亡くしたばかりだったことを言い当て「今後、不幸が続く。あなたを守るものを持たないといけない」と40万円の印鑑を勧めてきた。何度も迫られ、最後は押し切られた。

 人生に悩むこともあった女性は「人生とは何かを勉強しよう」とセミナーに誘われ、次第にのめり込んだ。旧統一教会と明かされたのは約1年後だった。

 入信を拒んだ夫とは離婚し、2000年に初対面の韓国人の男と合同結婚式を挙げた。その男から暴力を受ける日々に信心が次第に冷めていくのを感じ、16年に脱会を決意。
弁護士を通じて教団に返金を求め、今春までに約3千万円を取り戻した。ただ、お金を借りた家族には今も、本当の理由を伝えられずにいる。

 安倍晋三元首相の銃撃事件を知り「大変なことが起きた」と衝撃を受けた。一方で、教団の行事で何度も政治家のあいさつを聞いたことも思い出した。選挙では毎回、投票先を教会に指示されていたという。

 政府は11日、教団に対し宗教法人法に基づく初の「質問権」行使を正式表明した。女性は、30年余りに及んだ信者としての経験を振り返り「教団は人の心や魂を蹂躙(じゅうりん)し、大変な被害を強いている」と訴えている。