2021年度の栃木県内の狩猟免許所持者数は、若者が増加し、前年度に続いて4000人台と増加傾向が続いている。「網猟・わな猟」の免許登録者数が直近10年で最多となった一方、「第1種銃猟」の免許登録者数は最低だった。県猟友会の谷沢弥(わたる)事務局長(68)は網猟・わな猟の登録者数増加を歓迎しつつ、「銃でないと大きい動物を仕留めることができない」と「猟銃離れ」に危機感を募らせている。【面川美栄】

 県自然環境課によると、21年度の狩猟免許所持者数は4020人で12年度に比べ684人増えた。年齢別では、20年度まで県内の免許所持者の6割以上を占めていた60歳以上は21年度は6割を下回り、12年度は約2割を占めていた50代も減少した。一方、12年度は58人だった29歳以下は9年で3倍に増え21年度は180人に達した。30、40代もそれぞれ約2倍となり、同課の担当者は「少し若返りが見られる」と話す。若者が増えた背景に、猟を題材にしたマンガの人気やジビエ料理を楽しみたい人が増えたことなどがあるという。

 狩猟免許には、「網猟」「わな猟」と散弾銃などを用いる「第1種銃猟」、空気銃の「第2種銃猟」がある。狩猟免許所持者は、年度ごとに出猟する都道府県に登録を行う必要がある。21年度の県内の登録者数は3323人と過去10年でほぼ横ばいだが、種別で見ると、網猟・わな猟は11年度の780人から21年度に1399人に増加。第1種銃猟は、11年度の2665人から21年度には1843人と800人以上も減った。

 この理由について県猟友会の谷沢事務局長は、「網猟・わな猟の試験は比較的簡単で始めるのに手ごろだ。銃は、高齢化による減少に加え、所持許可などの規制が厳しいため、若い人が始めづらい」と話す。大きな獲物はわなだけでは仕留められず、銃がないと危険が伴う。大きな個体が増えれば、農業被害も増す。高沢さんは「上の世代が一気にやめた時、若い人たちはどうしたら良いか分からなくなる。登録者は減る一方で、害獣は増えていく」と警鐘を鳴らす。

 ◇危険性「わなより低い」

 那珂川町の介護福祉士、佐藤裕信さん(36)は8月、わなと第1、2種銃猟の免許を取得した。いずれの免許も所持する友人の高沢和也さん(34)が毎朝山を見回り、わなのかけ方などの説明を聞いて「格好良い」と思ったことが、きっかけだった。

 昨年、実家で育てていたジャガイモのほとんどがイノシシの被害に遭った。それまでも畑に多少の被害はあったが、駆除を行う人は年配者が多い。獣道のある山奥や急斜面を上った場所にわなをかけて毎日確認しに行くのをためらう人も多く、頼むのを諦めていた。高沢さんが見回りに来てくれるようになり「地元の人たちも喜び、皆わなをかけてくれとお願いしている」と感謝する。

 また、既にわなの免許を持っていた同町の公務員、吉村康弘さん(35)も同月、第1、2種銃猟の免許を取得した。銃を用いた方が、猟の危険性が低いと感じたからだ。以前、イノシシをくくりわなで捕まえた時、仕留めるために銃を使える知り合いを呼んだが、年配者が多く、病院通いなどで誰も来られなかった。つるはしで眉間(みけん)をたたくなどして仕留めたが、けがをしそうになった。また、周囲が草などで覆われていると、わなのかかり具合の確認が難しい。足ではなく爪にかかっていたケースもあったといい、外れれば突進してくる可能性がある。

 銃猟を行うためには警察署に申請し、銃の所持許可を得る必要がある。銃免許の所持者を増やすため、高沢さんは「猟は年配者がするものというイメージをなくし、猟の重要性を説明すれば興味を持つと思う」と話し、農業高校などに若い世代の免許所持者が出向いて講演会を行うことなどを提案する。

毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/9079d203f616edd8412312fe2f407b502484ab6d