大阪公立大学と産業技術総合研究所のチームは、1日、「泳ぐ最小の生命体」を作り出すことに成功したと発表した。最小限の遺伝情報のみで生き、自分では動けない丸い細菌に、特定のたんぱく質2種類を作れるよう遺伝子操作をしたところ、らせん状に変形、自ら泳ぎ始めたという。

 生物を形作る細胞が、進化の過程でどうやって運動するようになったのかは、生物学上の謎とされる。

 阪公大の宮田真人教授(生物物理学)らのチームは、細胞が運動するには最低でどれだけのたんぱく質が必要かに着目。カニなどに寄生する細菌「スピロプラズマ」が、らせん運動で泳ぐのに使う7種類のたんぱく質のうち、不可欠なものの特定を目指した。

 チームは「syn3(シンスリー)」という、増殖能力だけを持つように人工的に作り出された球形の細菌に遺伝子操作を実施。7種類のたんぱく質を順に体内で作らせた。

 元々は、米国の研究所が、必要最低限の遺伝子のみを選んで人工的に作り出し、2016年に発表した細菌だ。

 たんぱく質が1種類だけではうまく泳がなかった。MreB(ムレビー)と呼ばれるグループのたんぱく質2種類を作らせると、syn3の形が球かららせんに変わり、体をくねらせて泳ぎ始めた。増殖と遊泳だけの機能を持つ、世界で最小の生命体と言えるという。

 MreBはヒトなどの筋肉を…(以下有料版で,残り337文字)

朝日新聞 2022年12月1日 17時30分
https://www.asahi.com/articles/ASQD13J65QCZPLBJ005.html?iref=comranking_realrank07