防衛増税、法人税だけでは無理 財務省
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政府・与党は防衛費増額の財源に、法人税を軸に、東日本大震災後に導入した復興特別所得税やたばこ税を充てる方針だ。岸田文雄首相は個人の所得税負担が増加する措置はしないと明言したが、財政を所管する財務省は防衛力強化に必要とされる1兆円強の税財源の確保には法人税の増税だけでは賄えないとみる。首相の意向を踏まえ、国民負担の小さい税目の限定的な税率引き上げや転用の組み合わせで済ますことで、国民の理解を得たい考えだ。

法人税については、安倍晋三政権時代に賃上げや成長投資を支援する目的で、国と地方を合わせた法人税の実効税率を37%から現在の29・74%に引き下げてきた経緯がある。ただ、積極的な賃上げなど意図した成果に結び付いていないとして、与党内の一部では増税に前向きな声もあった。

ただ、自民党安倍派を中心に、不安定な経済情勢下での法人税の引き上げには慎重論も多い。そのため、税率は変更せず、法人税額に一定割合を上乗せする付加税方式で追加税率を低く抑える。また、対象から中小企業を除外することで負担感が軽減されるよう配慮する。

一方、軸となる法人税の税収は景気に左右され、安定財源としては不安定な側面もある。そのため、現在も課されている復興特別所得税の一部転用と、たばこ税の引き上げで補填する設計とする。たばこ税については、国防費増額の財源にスウェーデンで増税されており、政府内で財源の候補に浮上していた。

将来的には、株式や土地などの資産から多くの所得を得ている富裕層への金融所得課税や相続税の強化により防衛財源を確保することも可能性として残っている。「嗜好品であるたばこ、主に富裕層が対象となる資産課税や相続税への増税は、世論の反発は少ない」(財務省関係者)との見方もある。

特に、1億円を境に非上場株式などの譲渡所得が多い高所得者の税負担が減少する「1億円の壁」の問題が指摘されており、年間数億円の所得がある富裕層に相応の負担を求める狙いからも、富裕層への課税強化の検討が進みそうだ。(西村利也)