「それでも私はマスクしません」 ピーチ機運航妨害に問われた被告が言いたかったこと 着用拒否は差別か我欲か、法廷は異例の“厳戒態勢”


機内で客室乗務員の業務を妨害したとして飛行機を降ろされ、威力業務妨害などの罪に問われた奥野淳也被告(36)を当時取材した私は、
大阪地裁で開かれている公判の傍聴を続けてきた。「ウィズコロナ」に向けた社会のあり方が議論される中で開かれた、異例の法廷をリポートする。(共同通信=助川尭史)

7月、オミクロン株の派生型「BA・5」による第7波によって感染者が急増する中、本人尋問が始まった。

被告は東京大大学院で西洋政治史を学び、スウェーデンに留学経験もあるという。19世紀のヨーロッパで流行したコレラや、
ナチスドイツによる公衆衛生施策を学ぶうち、差別問題に興味を持つようになったらしい。修了後は東京都内の大学で非常勤講師として働き、コロナ禍を迎えた。

被告によると、感染者の家に中傷の言葉が貼られる事件が報じられるなど、日本全体がパニックになる中、人々がわれ先に買い求めたマスクは差別の象徴のように見えた。

自身はぜんそくがあり、長時間のマスク着用は難しかった。「未知のウイルスを前に、感情をあらわにした同調圧力を強制するのはおかしい」。
そう思い、世間の流れにあらがうようになったという。身ぶり手ぶりを交えながら、一連の事件は完全無実だ、と訴えた。

一方、検察側は、マスク未着用を理由に周囲から突然不当な扱いを受けたという主張に対する疑問や、証人の証言との差異に対する質問を投げかけた。

被告は正面から答えず、「それはあなたの感想です」 「以前答えたとおり」と打ち返した。

マスクについて、これまでの被告の主張と矛盾する証拠も突き付けられた。
飲食店では騒動を起こしたことを認めて示談しようとしたこと、また呼吸器疾患を裏付ける診断書が証拠として提出されていないこと、保釈の際にマスクを着用する誓約書が提出されていること、などだ。

これらの指摘にも被告は「お答えしません」と黙秘に徹した。

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