戦争初期の段階で、ウクライナ政府は様々な抵抗の方法を説明するウェブサイトを制作していた。このサイトでは公共イベントのボイコットやストといった非暴力的手段に加え、ユーモアや風刺の活用法も解説。その狙いは親ロシア当局を妨害しつつ、国民にウクライナの主権の正当性を改めて訴えることにある。レジスタンスのドクトリンではさらに、火炎瓶の使用や放火、敵の車両を破壊するためガスタンクに化学物質を混入させるなどの暴力的行動も推奨している。
また、戦争をめぐる言説をコントロールし、占領者のメッセージが定着するのを阻止して、国民の団結を維持するため、幅広い情報発信を行うことも要請。ウクライナ軍がポップ音楽やヘビメタをバックにロシアの戦車を攻撃する動画や、ウクライナ兵が迷子の動物を救助する映像も拡散している。意図的かどうかはともかく、こうした動画はレジスタンスの一部となっている。
レジスタンスの先頭に立つのは、ウクライナのゼレンスキー大統領その人だ。ゼレンスキー氏は毎晩の演説や国際会合への出席で戦争への関心が薄れないように努めてきた。ゼレンスキー氏による前線付近の視察が世界中でニュースになる一方、ロシアのプーチン大統領の姿が大統領府やソチのリゾートの外で目撃されることはめったにない。
今も続くこうした積極的な情報発信が海外からの支援のうねりを起こし、欧米政府にウクライナへの武器・弾薬の供給を増やすよう求める声が高まった。

レジリエンスとレジスタンス
全体として、レジスタンス作戦概念は国のレジリエンス、つまり外からの圧力に抵抗する能力を高め、レジスタンスの計画を立てる枠組みを提供する。ここでのレジスタンスは、被占領地の主権回復に向けた全国家的な取り組みと定義される。
リトアニアのレジスタンス計画策定について研究する欧州政策分析センターの研究員、ダリア・バンカウスカイテ氏は「レジリエンスとは平時における社会の強靱(きょうじん)さのことであり、戦時にはそれが侵略者に対するレジスタンスとなる」と語る。
全ての国に同一の計画を提供するのではなく、このドクトリンはそれぞれの国ごとの人口や能力、地形に合わせて設計されている。反乱勢力の創設や支援は意図されておらず、主権回復を目指して外国の占領者に抵抗する政府公認の部隊を設立することが狙いとなる。