静岡県裾野市の認可保育園で園児への暴行容疑で元保育士3人が逮捕されるなど、全国各地で問題のある保育が発覚しています。

 専門家は、保育園の安全を守るためには、「外の目」を入れることが大切だと指摘します。

 裾野市の私立認可保育園「さくら保育園」で、園児への暴行容疑で元保育士3人が逮捕された事件では、市の対応の遅れが指摘された。

 8月末に園から調査報告が出された後も、3カ月間公表しなかった。「園による子どもの安全確保や適正な保育環境の確保が優先と考え、園に任せていた」と釈明する。県と共同で特別指導監査に乗り出したのは、12月3日になってからだった。

さくら保育園への実地検査は?
 だがそもそも、問題を起こさないための仕組みは機能していたのか。

 慶応大の中室牧子教授は、「今回のような虐待にエスカレートする前に早期発見するには、普段から『外の目』を入れて保育の質を担保する定期監査こそ重要だ」と指摘する。

 児童福祉法施行令は、年1回以上、自治体職員が園に赴く「実地検査」(指導監査)を義務づける。重大な問題が見つかった場合、最終的に事業停止命令や認可取り消しが出ることもある。

朝日新聞の取材によると、静岡の園に対し、県は今年度、監査を実施していなかった。9月の予定だったが、コロナ禍の影響で延期になっていたという。

 2021年度は実施し、20年度は感染予防のため書面だけのやりとりで、いずれも指摘事項はなかった。

 市による監査は10年前に努力義務とされたが、一度も入っていなかった。市は「県の監査項目と同じなのでしていない」と説明した。

自治体は監査の人手不足
 厚労省によると、コロナ前の19年度でも、実地検査が入った園は全国で6割にとどまった。主な理由は、人手が足りないことだ。

 さらに、国は昨年から、園に行かずに書面やリモートでも代用できるようにする法改正を検討している。

 中室教授は、「子どもへの普段の接し方を見たり、厳しい労働環境にいる保育士のSOSを検知したりするのは、実地検査でないと難しい」と指摘する。(菅尾保、田渕紫織)

朝日新聞 2022/12/18 6:00
https://www.asahi.com/sp/articles/ASQDK6RY3QDKULEI004.html?iref=sp_liftop_all_list_n