政府は、副作用リスクの高い一般用医薬品の販売について、店舗における薬剤師の常駐義務を緩和する方針を固めた。テレビ電話やオンライン会議で薬剤師が面談することで販売を認める。都市部に偏在する薬剤師が遠隔で対応できれば、薬剤師不足に直面する地方などでも幅広い薬を購入できるようになる。
 政府が月内に開くデジタル臨時行政調査会で方針を決め、2024年6月までに、薬剤師の常駐を義務づけている厚生労働省令を見直す方針だ。都市部の利用者にとっても、薬剤師不在の時間帯でも購入できる利点がある。厚労省は過剰購入などを防ぐため、今後、在庫管理のあり方などを検討する。
 想定する薬は、市販薬と呼ばれる一般用医薬品のうち第1類だ。解熱鎮痛薬「ロキソニンS」や胃腸薬「ガスター10」(いずれも第一三共ヘルスケア)などがある。かぜ薬などの第2類、ビタミン剤などの第3類に比べ、副作用のリスクが高く安全性において特に注意を要する。薬剤師による対面対応を義務づけている。
 現行制度では、薬局やドラッグストアでも、第1類の場合、薬剤師の不在時には販売していない。店舗では商品棚を覆うなどして来店客が手に取れないようにしている。薬剤師がいない店舗では、そもそも第1類の品ぞろえがない。
 しかし、薬剤師の数は、全国的には増加傾向で約32万人いるものの、地域的な偏在が指摘されている。厚労白書によると、20年時点で、都道府県別の人口10万人あたりの薬剤師数は、7割以上の道府県が全国平均を下回った。平均を上回るのは、東京や大阪、福岡など10都府県程度にとどまる。
 オンライン面談で販売が可能になれば、大都市の薬剤師が、地方の購入希望者に対応できるようになる。

 薬剤師の常駐規制の緩和は、デジタル時代の新たなあり方だ。地方の課題の解決にもつながり、働き方改革とあいまって、地方に移住するハードルを下げる一つの要素になるだろう。
 薬は世代を問わず、多くの人が利用する。一般用医薬品の市場規模は2020年時点で1兆円規模とも言われる。大半は第2類や第3類といった医薬品で、第1類の市場規模はまだ小さい。有効活用は、高齢化で増大する社会保障費を抑制する一つの対策にもなる。薬剤師の常駐規制が緩和されれば、より多くの人が使いやすくなる。
 もっとも、第1類は、副作用のリスクが高いからこそ、販売する薬局などに薬剤師の常駐を求めていた。オンラインに移行しても、適切な販売や、店舗在庫の厳格な管理は欠かせない。規制緩和の恩恵を広げるには、こうした課題についてしっかりと「処方箋」を示す必要がある。(経済部 傍田光路)

読売新聞

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