新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの感染の有無を同時に検査できるキットについて、インターネットや薬局を通じた販売が解禁された。政府は発熱外来の受診者が減ることを期待するが、使用方法や検査精度、流通量にそれぞれ課題があり、どこまで効果があるかは見通せない。(米田悠一郎、神宮司実玲、枝松佑樹)

 12月上旬の夕方、大阪市西淀川区の福田診療所では、発熱外来の予約の電話が鳴り続けていた。受け付け開始直後に枠は埋まり、スタッフは「もういっぱいです」と説明に追われた。

 この日、発熱外来を受診した15人中、コロナ陽性は8人。さらにインフルの患者も10月から確認された。新型インフルが世界的に大流行した2009年以来のことという。

 厚生労働省の集計では、コロナとインフルが同時流行すれば、1日あたりの患者数は最大81万人と想定される。政府は重症化リスクが低い若い人に対し、まずコロナの抗原検査キットで自主検査し、陽性なら自宅療養、陰性で受診を希望する場合もオンライン診療などを活用するよう呼びかける。発熱外来の受診者を減らそうという狙いだ。

 ただ、福田診療所では、キットで陰性だった後に、受診に訪れる人が相次いでいるという。自主検査の結果が不安で再検査を求めたり、ほかの病気の診察を求めたりするためだ。

 実際、キットで陰性だったが、診療所で改めてPCR検査をしたところ、陽性とわかったケースも。自主検査が「偽陰性」だったとみられ、検体採取が正しくできていない可能性があるという。

 福田弥一郎院長は「きちんと検査できている人の割合は少ないと感じる。同時検査キットが市販されても同様の事態が続くのではないか」とみる。「陰性だと勘違いしたまま学校や職場に行けば感染を広げることになり、結果的に発熱外来が逼迫(ひっぱく)することにつながる」と懸念する。

 厚労省によると、同時検査キットの市販解禁の前から、偽陰性による治療の遅れや感染拡大のおそれは専門家から指摘があった。

重要なのはタイミング
 同時検査キットを使う上で注…(以下有料版で,残り593文字)

朝日新聞 2022年12月19日 8時00分
https://www.asahi.com/articles/ASQDL40X9QD7UTFL00H.html?iref=comtop_7_04