日米両政府が、来年5月に広島市で開かれる先進7か国首脳会議(G7サミット)に合わせ、バイデン米大統領による被爆地・長崎市への訪問を検討していることがわかった。実現すれば、現職の米大統領の長崎訪問は初めてとなる。岸田首相が同行し、日米両首脳がそろって二つの被爆地から、「核兵器のない世界」に向けた取り組みの重要性を世界に発信したい考えだ。

 複数の政府関係者が明らかにした。長崎訪問案は米側から水面下で打診があり、日米両政府が実現に向けた協議に入っている。地元の住民感情を含め、長崎市の受け入れ態勢などを慎重に見極め、最終判断する。

 ウクライナを侵略したロシアのプーチン大統領が、核兵器の使用を示唆して威嚇するなか、日米両首脳が、唯一の戦争被爆国である日本の二つの被爆地に足を運ぶことで、核の使用や威嚇の不当性を内外に伝える機会となる。第2次世界大戦当時の敵対関係から同盟に転じた日米の強固な絆を示す象徴ともなり得る。

 広島市には2016年、当時のオバマ米大統領が現職の米大統領として初めて訪れた。当時、外相だった首相は案内役を務めた。バイデン氏はオバマ政権で副大統領を務め、オバマ氏が掲げた「核なき世界」の理想を共有している。バイデン政権内では、広島サミットでも重要議題となる「核なき世界」に関するメッセージを強める手法を模索すべきだとの声が出ていた。

 バイデン氏は熱心なカトリック信者として知られる。長崎訪問時に、かつて原爆で倒壊したカトリック浦上教会を訪れ、祈りをささげる案も浮上している。

 広島選出の首相はかねて、世界の指導者に広島、長崎への訪問を呼びかけており、バイデン氏の長崎訪問案を好意的に受け止めている。首相は、サミット開催地の広島でも「核なき世界」に向けた取り組みを充実させたい意向で、こうした考えを米側に伝えている。バイデン氏を含む各国の首脳が、原爆の惨禍を伝える広島平和記念資料館の視察に時間を割くことなどを目指す。

 広島サミットは来年5月19~21日に開催される。長崎訪問の日程は、この前後を想定している。日米両政府は今後、長崎と米国の双方の世論に配慮しながら、詰めの調整を急ぐ方針だ。

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