緩み続ける財政規律に「永田町からの圧力が猛烈」と官庁幹部も嘆く…借金頼みでも巨額の予備費が常態化

 2023年度の政府当初予算案は過去最高の税収を見込むものの、財源の3割を借金に頼る。それなのに、「便利な財布」と批判される巨額の予備費が今回も計上され、年度中に補正予算で編成される経済対策と同じく常態化している。今後も拡大に向かう防衛費の財源も不安定で、日本の財政はますます綱渡りの状況だ。(山田晃史)
 過去最大の予算案の要因となった防衛費増額は今後も続き、政府は27年度に8兆9000億円の水準をもくろむ。しかし、その財源の確保は不確かだ。与党は今月、法人、所得、たばこの3税の増税で賄う方針を決めたが、実施時期は未定。自民党内では世耕弘成参院幹事長が20日に「国債償還(返済)ルールの見直しも議論するべきだ」と発言するなど、借金返済を遅らせて、その一部の資金を使う案が浮上している。
 歳出改革も財務省幹部が「達成できると甘く考えていない」と語るように、ハードルが高い。3割を占める社会保障と防衛費が全体の予算を圧迫する中、岸田政権が掲げる「子ども予算倍増」との両立も困難な状況だ。決算剰余金は経済対策の財源にもなっており、防衛費に回すことで、玉突きで借金増につながる恐れもある。
 閣議のみで使い方を決められる予備費は、新型コロナ対策などに使えるもので5兆円に上る。当初予算での巨額計上は21年度から3年連続となり、もはや常連といえる存在だ。
 予備費は国会での審議を経ずに支出できるため、事前の精査や使われ方の追跡が甘くなりがちだ。SMBC日興証券の宮前耕也氏は「財政規律の緩みの一因になっている。便利な財布にしてはいけない」と批判する。
 財政規律を緩めているのは、経済対策の裏付けとなる補正予算も同様だ。「コロナ以降、感覚がまひして大型の補正予算が前提になっている。永田町からの圧力が猛烈だ」とある経済官庁幹部はため息。編成したばかりの23年度当初予算とは別に、巨額の経済対策が実施されるのではないかと既に懸念する。ある財務省幹部は、常態化する巨額の補正予算を「当初予算を年2回やっているのに近い」とやゆする。
 経済対策の補正予算には「緊急」ではない事業も並び、当初予算との線引きが曖昧にもなっている。宮前氏は「当初予算では比較的厳しく締め付け、補正で大盤振る舞いしている」とみる。日本の財政を健全に向かわせるため、当初予算以上に、補正予算にメスを入れる必要性を指摘する。

東京新聞 2022年12月24日 06時00分
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