二〇二二年、小池百合子知事の都政は、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」との戦いで幕を開けた。ただ、それまでの厳しい行動制限を見直し、新年早々「感染を止める。社会は止めない」と明言した。
 オミクロン株の爆発的な感染力のため、夏の第七波では、一日の新規感染者は約四万人を記録。それでも、今年、小池知事は国に緊急事態宣言発令を一度も要請していない。冬の第八波でも、オミクロン株の重症化率、死亡率の低さを考慮し、重症化リスクが高い高齢者対策を重視。介護付き療養施設を整備する一方、若年層向けには、他の地域に先駆け、オンラインでの患者登録や診療体制を構築し、経済を回しながら医療逼迫(ひっぱく)の回避を模索している。
 二月、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発すると、世界的なエネルギー危機が起き、小池知事は敏感に反応。四月、節電や省エネを呼び掛けるキャッチフレーズとして、電力を「減らす、創る、蓄(た)める」の頭文字をとった「HTT」を発表し、強力に推進し始めた。
 三〇年に温室効果ガス排出量を〇〇年比で50%削減する「カーボンハーフ」を掲げ、全国で初めて、新築一戸建て住宅への太陽光発電パネル設置義務化を目指した。六月のパブリックコメントでは都民の賛否が拮抗(きっこう)し、十二月の都議会では、自民党が「義務化への説明が不十分」として、関連条例改正案に反対。賛成多数で義務化は成立したが、小池知事と自民との対立は鮮明化した。
 背景には、小池知事の政治家としての求心力の低下がある。七月の参院選。小池知事を長年支え、「妹分」と言われてきた荒木千陽元都議が「ファーストの会」の候補として、東京選挙区に出馬した。小池知事は新型コロナの第七波中にもかかわらず、荒木氏の応援に奔走。しかし、荒木氏は六人いた当選者の最低得票数の半分しか取れず、惨敗した。
 その後も都民ファーストの会代表で居続けた荒木氏に党内の一部が反発。都教育委員会が都立高入試で活用を決めた英語スピーキングテスト問題をきっかけに三人の都議が離脱した。
 自民の幹部は、小池知事「肝いり」の太陽光パネル義務化に反対した際、「都合のいい時だけ協力してって、そうはいかないよ」とあからさまに心情を吐露。来年四月の統一地方選を控え、影響力に陰りが出た小池知事をけん制する動きを見せている。(沢田千秋)

東京新聞 2022年12月24日 07時18分
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