ウクライナから180万人を受け入れる隣国の今 侵攻10カ月、関心減り支援疲れ シェルター運営者は悲鳴

 ロシアのウクライナ侵攻から24日で10カ月となり、ウクライナ避難民を最も多く受け入れる隣国ポーランドでは支援疲れが顕在化している。政府の財政支援や民間の寄付が激減し、避難民は厳しい冬を過ごす。ウクライナではロシアの攻撃で生活インフラが破壊され、冬を越すために避難民が再び増える懸念もある。(ポーランド南部クラクフで、加藤美喜、写真も)
◆寄付金は100分の2に激減「日々の支払いで精いっぱい」
 クラクフ市内の民間シェルター、ドハツカ支援所。2月の侵攻直後から避難民の母子や高齢者を受け入れてきたが、スタッフのポリーナ・ピエトルハさん(37)は「初期の寄付金額が100なら今は2に激減した」と話す。最大70人を収容できる3階建ての建物は電気の節約で薄暗く、一部の部屋の壁は大量の黒カビが発生し、ベッドが使えない。
 「心ある人々の善意で何とか運営しており、日々の支払いで精いっぱい。政府は『自立』を促すが、小さな子どもを抱えて職と部屋を探すのは容易ではない」と訴える。
 ウクライナ西部リビウから4月に逃れ、「ドハツカ」で3歳の息子と暮らすゾリャーナ・ツィプさん(31)は「アパートを探しているが、30回は断られた。弱者に立ち退きを強制できない法律が足かせとなり、大家が貸すのを渋っている」と嘆く。
 クラクフ市も財政負担に耐えきれず、ピーク時に5カ所あった公営シェルターを1カ所に減らした。市福祉課の担当者は「世間の関心も報道も減り、財政は大変厳しい。越冬避難民が増える恐れがあるが、もうそんなに受け入れる体力がない」と疲れた様子だった。
 ただ1つ残った公営シェルターでは、侵攻直後から滞在する人が3割に上る。幼い女の子が、ここで生まれたという赤ちゃんのおむつを泣きながら替えていた。姉とみられるが、母親は職探しに出ているためか姿が見えなかった。
 ポーランド国境警備隊によると、ウクライナからの入国者は侵攻開始から今月中旬までで、延べ850万人。出国者を引くと単純計算で現在も180万人がポーランドにとどまる。
◆国民の6割が支援打ち切りを評価 避難民自立へ舵切る政府
 ポーランド政府は侵攻直後から、避難民に18カ月の滞在を許可し、社会保障や医療サービスも提供してきた。避難民を受け入れる一般家庭には1人あたり1日40ズロチ(約1200円)を支給してきたが、この制度は4カ月で打ち切られた。来年3月からは、公営シェルターに滞在する避難民に一部自己負担を求めることも法制化された。
 6月の世論調査では、6割以上の国民が政府の財政支援打ち切りを肯定的に評価した。ポーランドの財政負担は国家予算の1割に相当する90億ユーロ(約1兆2500億円)に上る。17%を超えるインフレが負担に拍車をかける中、政府は支援の重点を避難民の社会的統合と経済的自立に移行させている。
 クラクフで人道支援を続ける社会福祉法人「福田ふくでん会」(本部東京)ポーランド支部の吉田祐美さん(28)は「戦争がいつ終わるか見えない中、今支援を打ち切ったらどうなるのだろうという人々ばかり。日本の支援に涙を流して感謝する人も多く、少なくともこの冬を乗り切れるように支援を続けたい」と話した。福田会の支援サイトはこちら。

東京新聞 2022年12月25日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/221928