親の信仰の影響を受けて育つ「宗教2世」。安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに
多くの当事者がその体験を語り始めています。信仰とは、家族とは、生きるとは。寄せられた「声」をシリーズで届けます。

●声を聞いて・宗教2世(5)小雪の場合
 その夜も、母は遅くまで帰らなかった。腹をすかせたのか、生後半年ほどの妹が泣き出した。
見よう見まねで粉ミルクをお湯で溶かす。哺乳瓶に必死で吸い付く妹を見て、胸が締め付けられた。

 帰宅した母は激高した。「勝手にミルクなんてあげて。死んだらお前はどう責任取るんだ」。
小学1年の少女は、殴られたほおの痛みにじっと耐えた。

 小雪(34)=仮名=は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の宗教2世だ。「母に愛されたい」。
その一心で母の暴力やネグレクト(育児放棄)を我慢してきた。だが、その思いは金銭に執着する
母の姿を見て揺らぐことになる。小雪の人生をたどってみたい。

●「うちは貧乏」ノートも買ってもらえず
 小雪が幼少の頃から、専業主婦の母は教会に入り浸った。保育園に預けられたが、いつも母の迎えは
遅かった。がらんとした夜の園内で、一人ぽつんと待たされた記憶がある。

 小学生の時、7歳下の妹が生まれた。母は妹をかわいがり、小雪には冷たく当たった。
算数の問題が解けないと壁に押しつけられ、首を絞められた。「生意気」という漢字の読み方を聞くと
「お前みたいな子どものことよ」と言われた。

 それでも文句を言わず、母の代わりに妹の面倒を見て寝かしつけた。会社員の父は深夜帰りが多く
一緒にいた記憶がない。

連載「声を聞いて・宗教2世」、次回は12月30日午後5時に掲載します。「私に信じられる心はあるか」と迷いつつ
信仰を続ける「エホバの証人」2世、信二の声です。
 「うちは貧乏だから」。母の口癖だった。風呂は2日に1回。服も数日着ないと洗ってもらえず、1週間…

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毎日新聞 2022/12/29 17:00(最終更新 12/29 17:00)
https://mainichi.jp/articles/20221227/k00/00m/040/282000c