ウクライナのゼレンスキー大統領は2023年を、侵攻するロシアに対する戦争の「転機」の年と位置づける。戦局の展開を大きく左右するのが、米国を中心に北大西洋条約機構(NATO)の加盟国から受ける軍事支援だ。ただ、戦争の長期化に伴い、兵器の調達や補給が滞る事態が懸念されつつある。

ジャベリン、ハイマース、パトリオット… 米国の軍事支援は計3兆円弱
 22年12月21日、バイデン米大統領はホワイトハウスでゼレンスキー氏と会談した後の記者会見で、「我々はウクライナの自衛と戦場での成功に必要なものを提供していく」と述べた。

 米国のウクライナへの軍事支援は22年2月24日のロシアの侵攻開始以来、212億ドル(約2兆8千億円)にのぼる。現在の地上戦の主力となっている155ミリ榴弾(りゅうだん)砲142門と砲弾100万4千発をはじめ、戦闘初期に活躍した対戦車ミサイル「ジャベリン」は8500基以上、携帯型地対空ミサイル「スティンガー」は1600基以上を提供。戦争の進展とともに、供与する兵器も高度化した。6月以降に提供した高機動ロケット砲「HIMARS(ハイマース)」約20基(計38基の提供を予定)は、前線から離れた弾薬庫や司令拠点を破壊し、地対空ミサイルシステム「NASAMS(ネイサムス)」2基(計8基の提供を予定)も、迎撃の命中率100%ともいわれる効果をあげてきた。

 ゼレンスキー氏の訪米にあわせ、地対空ミサイル「パトリオット」1基の供与も発表された。巡航・弾道ミサイルや航空機、無人機(ドローン)を撃墜できる。ロシアによる民間インフラへの攻撃で、ウクライナ国民は厳冬期に電気や水のない生活を強いられており、防衛手段として期待が高い。

自国の在庫は逼迫 「他の紛争に対応できるか懸念」
 米国などからの兵器がウクライナの「命綱」となる一方、前例のない規模の軍事支援を続けた結果、在庫が逼迫(ひっぱく)しはじめた。米行政管理予算局で国防総省の予算戦略や兵器の調達を担当した米戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン上級顧問は、「一部の兵器については、戦争計画を立てる担当者が『作戦に対応できなくなるのではないか』と心配する水準まで減っている」と話す。

 カンシアン氏の分析では、米…(以下有料版で、残り1272文字)

朝日新聞 2023/1/1 21:00
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