受験シーズン本番を迎えようとする中、都立高校入試に絡む英語テストの公平性を疑う声が都民から上がっている。都議会でも追及された小池知事は、「大きなトラブルはなかった」と言い張るばかり。子供たちの未来の代わりに、彼女が守ろうとしているのは……。

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 来年2月に行われる都立高校の入学試験。その合否判定に使われる英語スピーキングテストが、11月27日に実施された。ところが、受験生やその保護者、現場教師や英語教育を専門とする大学教員など各方面から、テストの「不備」が指摘されている。


 件のテストは今回、公立高校の入試では全国で初めて導入されたもので、受験生はマイク付きのイヤフォンとイヤーマフを装着し、タブレット端末を見ながら設問に声で回答する。

 その会場で受験生から、「隣の人の回答音声が聞こえた」ゆえに事実上のカンニングが可能で「タイミングをずらして答えることができた」など、テストの公平性を問う声が相次いだ。

行政と企業の癒着が問われる事態
 都議たちが受験生と保護者に行ったアンケートによれば、音漏れに関する指摘だけで166件。にもかかわらず、冒頭の小池知事や浜佳葉子(かよこ)都教育長までもが、試験は「適切に実施された」と宣(のたも)うのだった。

「都教委からテストの運営を約5億円で受注したのは、通信教育大手のベネッセコーポレーションです。行政と一企業の癒着が問われる事態だと思います」

 とは、都民ファーストの会所属の都議・森愛氏。小池知事が立ち上げに関わった会派の議員ながら、テストの問題点をこう指摘する。

「業者選考の段階で、都の会議にベネッセ出身者が参加していたり、業者決定後に東京個別指導学院などベネッセ系列の学習塾がテスト対策にひとしい講座を開いていた疑いがあります。都はこのような出来レースを認めないとしていたにもかかわらず、見過ごされていた。肝心のテスト内容も、中学生では教わらない文法が入るなど質(たち)が悪い。都がベネッセに丸投げせず、しっかりチェックしなければいけなかったと思います」

「とても悪質」
 ベネッセは都を足掛かりに、大学入試など全国で導入が予定されるスピーキングテストに触手を伸ばしているとされ、実現すれば同社の学習塾や問題集の売り上げ増は確実。日本の英語教育をかような企業に任せていいのか議論もあろうが、やはりというべきか。直近でもベネッセは、自社教材でトラブルを起こしていた。

 突然、同社が12月に2024年末でサービスを終えるとしたのは、子供向け英語教材「Worldwide Kids」だ。

「9月末に勧誘を受けて約22万円を一括で払い入会したのに、だまされた思いです。入会して2カ月で『サービス終了』だなんて、消費者をバカにしています」

 そう憤るのは、3歳の娘を持つ30代の母親だ。

「質の高い教材のみならず、娘が8歳になる会員期間の終了までネイティブ講師のレッスンなどさまざまなサービスが受けられると説明していたのに、べネッセは肝心の突然終了することへのおわびはなく、不安を抱かせたことだけ謝罪するのみ。終了発表直前の11月末まで勧誘されていた方もいたそうで、悪質だと思います」

ベネッセの回答は
 一連の指摘を当のベネッセに質すと、

「(テストの)事業主体は都になりますので、弊社はお答えする立場にございません。(公教育との癒着については)そのような事実はございません」

 と話し、英語教材の件は、

「一部サービスが24年に終了する説明だけが強調され、ご受講する皆さまに『教材が届かなくなるのでは』『電子玩具の保証などが無くなるのでは』などご不安を抱かせる形になってしまいましたこと、心よりおわび申し上げます」

 かたや都教委はといえば、

「テストについての質問は、ホームページのQ&Aコーナーをご参照ください」

 と、木で鼻をくくったような答えだった。必死に机に向かう受験生や、子を持つ親たちが食い物にされたままでいいのか。今こそ「都民ファースト」を唱える小池知事の手腕が問われよう。

「週刊新潮」2022年12月29日号 掲載

2023年1月2日 5時56分 デイリー新潮
https://news.livedoor.com/article/detail/23473963/