https://www.koshonin.gr.jp/business/b06/q0603
Q. 「尊厳死宣言公正証書」について、説明してください。

過剰な延命治療を打ち切って、自然の死を迎えることを望む人が多くなってきて、
事実実験の一種として、「尊厳死宣言公正証書」が作成されるようになってきました。
「尊厳死」とは、一般的に「回復の見込みのない末期状態の患者に対して、
生命維持治療を差し控え又は中止し、人間としての尊厳を保たせつつ、
死を迎えさせることをいう。」と解されています。

近代医学は、患者が生きている限り最後まで治療を施すという考え方に
忠実に従い、生かすべく最後まで治療を施すことが行われてきました。
しかし、延命治療に関する医療技術の進歩により、患者が植物状態になっても
長年生きている実例などがきっかけとなって、単に延命を図る目的だけの治療が、
果たして患者の利益になっているのか、むしろ患者を苦しめ、
その尊厳を害しているのではないかという問題認識から、
患者本人の意思(患者の自己決定権)を尊重するという考えが
重視されるようになりました。

「尊厳死」は、現代の延命治療技術がもたらした過剰な治療を差し控え
又は中止し、単なる死期の引き延ばしを止めることであって許されると
考えられるようになりました。

近時、我が国の医学界などでも、尊厳死の考え方を積極的に容認するようになり、
また、過剰な末期治療を施されることによって近親者に
物心両面から多大な負担を強いるのではないかという懸念から、
自らの考えで尊厳死に関する公正証書作成を嘱託する人も
出てくるようになってきました。

「尊厳死宣言公正証書」とは、嘱託人が自らの考えで尊厳死を望む、
すなわち延命措置を差し控え、中止する旨等の宣言をし、
公証人がこれを聴取する事実実験をしてその結果を公正証書にするものです。