「お金10倍にするよ」預けた222万円はどこへ マッチングアプリで出会った男性の投資話に乗ったら…


 「俺に預けてくれたら10倍にする」。マッサージ店で勤務する東京都内の女性(26)は、マッチングアプリで知り合った男性に、いつか独立しようとコツコツためたお金を渡してしまった。返金には応じてもらえない。女性は「うまい話なんてあるわけないのに…。浅はかだった」と悔やむ。(鈴鹿雄大)
 独立を支援してくれるような資金力のある人と出会えないかな—。女性は昨年11月、そんな思いでマッチングアプリで出会いを求め始めた。
 男性から、すぐに連絡があった。「テレビ関係の会社を経営。毎日タレントさんと仕事しています。年収3億円以上、31歳」。LINEで開業の夢を伝えると「力になろうか。半年から1年あれば、分散投資で150万円を1500万円にできる。用意できる分だけ渡してほしい」とメッセージを送ってきた。
 女性は「すごい人に違いない。こんな良い話はない」と有頂天になる。本名を尋ねても「佐藤」としか返ってこなかったが、特に怪しまなかった。
 翌日、早速都内の喫茶店で待ち合わせ、かき集めた72万円を手渡した。当然、何らかの契約書類を交わすものだと思っていたが、男性に「書類はなくても大丈夫だよ。必要なら秘書に準備させるけど」と言われ、「そんなものか」と納得してしまった。
 家に帰った後も頭に残ったのは、男性の「もっと出したら、もっと増える。消費者金融から借りてまでお金を用意した子は、3000万円も増やした」との言葉。後日、消費者金融から借り入れ、さらに150万円を手渡した。
 この一件を知人に何げなく話すと、「書類がないなんて絶対におかしい」と言われ、弁護士に相談した。「典型的な詐欺の手口ですね。まずは一緒に男性から話を聞きましょう」。弁護士が同席すると告げれば男性は現れない可能性がある。弁護士には、近くでひそかに待機してもらうことにした。
 会う約束をした当日、女性がカフェで待っていると、男性から突然、「一人じゃないだろ。だましたな。なめんな」と怒気を含んだLINEが送られてきた。
 女性が「実は弁護士に相談している。お金を返してください」と返信すると、男性は「返金するので銀行口座を教えて」と態度を一変させたが、いまだ振り込みは確認されていない。
 女性は詐欺事件として警視庁に被害を相談した。「簡単に信じてしまった私も軽率だった。でも、人の夢に付け込んでだますなんて許せません」と声を震わせた。
 国民生活センターによると、マッチングアプリで知り合った相手から投資を持ちかけられ、現金を渡してトラブルになるケースは近年増えている。センターの担当者は「相手の言葉をうのみにせず、内容が理解できない場合は契約や取引をしないでほしい」と呼びかけている。

東京新聞 2023年1月11日 06時00分
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