世界で最も厳しかった新型コロナウイルス対策が突如終了した後、感染が急拡大している中国で、
政府から支援を得られない市民が医薬品などを融通し、助け合いで生き抜こうとしている。

先月発熱したシェア・シュエさんと娘は40度の高熱を出していることが分かったが、解熱剤「モトリン」の期限は切れていた。

「薬を手に入れるのがこんなに難しいなんて思ってもいなかった」とシュエさん(31)は南部・広東省広州市から振り返る。

病院は患者であふれていたため、シュエさんが代わりに頼ったのはソーシャルメディアだった。
微信(ウィーチャット)で困っている人々への寄付を募るアプリを見つけたのだ。

シュエさんが具体的に事情を説明したところ、約1時間後に無料のコロナ検査キットを2つ提供するとの電話があった。
さらに30分後にはコロナから回復したばかりだという女性が2錠ならイブプロフェンを送ることができると伝えてきた。

「お互いを助け合う人々の温かみを実感したのは初めてだ」とシュエさん。
「自分の子どもにも同じことをするよう伝えていきたい」と話す。

コロナ禍が始まって以降、政府に移動を管理されてきた約14億人の中国市民はこの6週間で、自力で生き残る方法を探らなければならなくなった。
習近平指導部は今年初め、感染の波を「乗り越えるためのさらなる努力」を国民に求め、国営メディアは自分の健康にはまず自ら責任を持つよう市民に促した。

中国共産党総書記で国家主席の習氏は春節(旧正月)を控えた18日、現在のコロナ感染状況は「凶猛(すさまじい)」と認めつつ、「夜明けはすぐそこまで来ている」と訴えた。
主に農村部の地方当局者に対し、医療を改善させ人々の健康を守るよう求めた。

だが、何の助けもなくコロナ感染を耐えしのいでいる一般市民の多くにとっては、こうした呼び掛けもむなしく響く。
この経験を忘れることは難しく、共産党による一党支配を受け入れる代わりに、国民の安全を維持し、生活を向上させるという党の正当性を支えてきた社会契約が揺らぐ恐れもある。

市民は今、実質的に共産党なしでの生活を実体験している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-01-19/ROPGPZT0AFB501

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