日本人は昔から昆虫を食べていた

日本では、中世以前の実態は定かではありませんが、江戸時代以降になると多くの記録が残されています。 この時代に庶民がひんぱんに食べていた昆虫には、イナゴ、スズメバチ類の幼虫、タガメ、ゲンゴロウ(金蛾虫)、 ボクトウガやカミキリムシの幼虫(柳の虫)、ブドウスカシバの幼虫(えびづるの虫)などがあり、調理法も煮る、 焼く、漬ける、でんぶにする-などなどさまざまでした。

 海で囲まれ、大型哺乳動物も、集めやすい群居性の昆虫も少ない日本は、食虫習俗の発達に関しては中レベルの国に属し、 その記録は多くはないものの少なくもありません。大正時代には農商務省の昆虫学者・三宅恒方によって、 はじめてアンケートによる食用・薬用昆虫の全国的な調査が行われています。

 それによると昆虫食は、ハチ類14種をはじめ、ガ類11種、バッタ類10種など、合計55種に及び、 また地方別では内陸の長野県の17種を筆頭に、41都道府県に達しています。これらには、 せっぱつまった救荒食は含まれていないので、近代まで日本人は実にいろいろな虫を”いかもの食い”ではなく、 好んで食べていたことがわかります。