読売新聞1/23 15:00
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新型コロナウイルスのワクチンについて、高齢者は若い人よりも免疫細胞の反応が弱くなっているとする研究結果を、京都大チームが発表した。高齢者ではワクチン接種が強く推奨されるものの、免疫反応にブレーキをかける分子が活発に働く傾向があるという。論文が国際科学誌に掲載された。

京大iPS細胞研究所の浜崎洋子教授(免疫学)らは、米ファイザー製のワクチンを2回接種した23~63歳の成人107人と65~81歳の高齢者109人を対象に、血液中の免疫細胞の変化を調べた。その結果、個人差はあるが、高齢者ではワクチンに反応した免疫細胞の割合が若い人の25~50%にとどまり、効き方が弱い傾向がみられた。

免疫反応にブレーキをかける分子「PD―1」の働き方を調べたところ、高齢者では平均して若い人の2倍近くまで強まっていた。PD―1は2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑・京都大特別教授らが発見し、がん治療薬に応用されている。

浜崎教授は、高齢者では体に過剰な負担がかからないよう、免疫反応にブレーキがかかりやすくなっている可能性があると指摘。「免疫機能の弱い人にも効果があるワクチンの開発や、高齢者と若年者のそれぞれに適した接種計画の立案などにつなげたい」と話す。ワクチンは重症化を防ぐ効果が確認されているため、国は重症化しやすい高齢者らに接種を呼びかけている。

中野貴司・川崎医科大教授(感染症学)の話「ワクチン接種後の高齢者で抗体が増えにくいという調査結果はいくつか出ているが、今回は免疫細胞を調べた点に意義がある。既に感染した人や、何度もワクチン接種を受けた人の体内で、免疫細胞がどのように反応しているかも詳しく知りたい」