専欄

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実際には失業率20.5%? 中国の失業者増大は防げるのか
2020.6.9 08:55

中国では、新型コロナウイルスの流行は収まったものの、失業者
の増大という社会の安定にも関わる問題に直面している。ほぼ全国規模で
都市封鎖したことから、膨大な失業者が生まれてしまった。生産再開後も、
操業率は思うようには上がらず、職場に復帰できない農民工が数多くいる。
加えて、7月に卒業予定の大学生の就職活動が始まっているが、企業の求人数は
昨年を大幅に下回っており、深刻な就職難が発生している。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)


アジア開発銀行(ADB)は最新の報告の中で、新型コロナによる中国の労働市場への
影響は6290万~9520万人に達するとの分析結果を明らかにしている。日本などと
違って都市を完全に封鎖したことによる打撃が、予想以上に大きかったというのである。

中国国内では、中泰証券の李迅雷研究所長が「微信(ウィーチャット)」の公式アカウント
の中で、今年第1四半期に中国で新たに増えた失業者数は、既に7000万人を超えているとの
推定数字を出した。その多くは農民工だという。失業率についても当局発表では6%前後だが、
李所長は実際には20.5%に達していると指摘している。

この文章は掲載直後に削除され、しかも李氏は研究所長を更迭されてしまった。いかに政府が
失業問題に神経をとがらせているかが分かる。もちろん、生産再開によって職場復帰は進んで
いこうが、元の状態に戻すには、相当の時間がかかろう。

大学生の就職戦線も厳しい。今年の大学生新卒数は874万人で、昨年よりも約40万人多い。
しかも新型コロナの発生で、貿易、映画・観光、自動車、金融など多くの分野で求人数は激減
している。