前首相秘書官の差別発言をきっかけに、LGBTなど性的少数者の人権を巡る課題が国会で議論されている。一方、地方では当事者のカップルを公的に認める「同性パートナーシップ制度」を導入する自治体が急増。東京都渋谷区と認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪市)の調査では、1月10日時点の国内人口のカバー率は65%に達した。首長からは、同性婚の法制化に向けた国の議論の進展に期待する声も出ている。
 この制度は、性的少数者のカップルを婚姻相当と自治体が認め、証明書を発行する仕組み。家族向け公営住宅への入居や公立病院での面会などが可能になり、自治体は民間にも同様の対応を呼び掛けている。2015年に渋谷区と世田谷区が全国で初めて導入した。
 渋谷区と認定NPO法人の調査によると、今年1月10日時点で導入した自治体は255団体で、内訳は10都府県と245市区町村。19年7月時点から10倍以上に伸びた。最近では、カップルと暮らす子どもとの親子関係も認める「ファミリーシップ制度」を導入する動きも見られる。
 ファミリーシップ制度がある兵庫県明石市の泉房穂市長は「これからは子どもや多様性を大切にした政策が大事。市民の強いニーズがあるからこそ取り組んでいる」と強調。パートナーと子どもの親子関係を行政が証明することで、保育園の送迎や病院の付き添いなどに役立っているという。
 ただ、自治体単位でいくら取り組んでも、配偶者控除の適用や財産の相続など法律上の課題は依然として残る。岡山県総社市の片岡聡一市長は「当事者がLGBTであることを隠さずに言える環境を、地方は一生懸命つくってきた。最終的には同性婚を法的に認めるかどうかの問題であり、国は議論を着実に前に進めてほしい」と求めた。

時事通信 2023年02月12日07時19分
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